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「はっ?!
丸一日!?」
「はい。
まあ寝てる間以外の朝起きてから夜眠るまでの間で良いですよ。」
「いやいやいや!
丸一日なんていきなり無理だよ!」
「無理じゃなくてやるんです。」
キャロルは詠唱を唱え指先に小さな水の球を出す。
「別に大きさは問いません。
この位小さくても」
流す魔力を増やし人を呑み込む位の大きさの水の球に変える。
「…うわあ。」
「またこれ位大きくても。」
彩花嬢は水の球をキラキラした目でつついている。
もしかしたら魔術を初めて見たのだろうか。
「この宿題で彩花様には魔力を安定して調節し流し続ける事、後は無意識でも掌の中に水の球がある事をイメージ出来るようになる事の2つが可能となります。
これが出来れば正直後は独学でも何とかなります。」
「えっそうなの?」
「まあ実際私はほぼ独学ですし。
魔法陣に関しては古代語を学びながらになるので学園に入ってゆっくりやれば良いと思いますから。
魔術に関しては書物を見て、どんな魔術でそれにはどの位の魔力を流せばいいのか想像して詠唱を唱える、それだけです。
だから最初以外別に教師役なんていらないんですよ。」
「へーそうなんだ!」
「ですです。
だからこれさえ出来れば彩花様も立派な魔術師の仲間入りですよ。」
「なんか出来るような気がしてきたよ!」
「それは何よりです。
頑張って下さいませ。」
キャロルは立ち上がりぺこっと頭を下げて立ち去る。
だがキャロルは気が付いていなかった。
キャロルの教え方がいかに常識から外れた事なのかを。
自分が何故筆頭魔術師候補と呼ばれているのかを。
この国の何人が丸一日ウォーターボールを持続して出す事が出来るのかキャロルは知らないのである。
そしてそれが如何に困難な事なのかも。
全てはキャロルが塔で独学で学んだ所以である。
自分が3歳で暇つぶしに覚えたのだから彩花嬢だって出来るのだと疑いもしていない。
そう。
キャロルにはそこに意地悪な気持ちなんて決して1つもなかったのである。
ただ自分がやった様に教えただけなのだから。
「『教え方が余りにもスパルタ過ぎて教会の壁に穴が開くわ、聖女が魔力切れで何回もぶっ倒れている。
嫌がらせは辞めて頂きたい。
筆頭魔術師候補のくせに魔術を教える時に私情を挟んだりして恥ずかしくないのか。』
…だって。」
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