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 海に潜って貝を拾ったり平べったい石を見つけて水に投げ飛ばして遊ぶ。


 レオンは上手く水を切るのにキャロルのはちゃぽんと沈んでしまい上手くいかない。


 悔しくて何度もリベンジしているキャロルを見てレオンは大爆笑している。


 毛玉は自分の腹で水面を跳ねてドヤ顔していた。


 キャロルが腹いせに魔術を使って海水で作ったイルカに毛玉を追い掛け回させる。


 レオンも大興奮して海に飛び込みイルカを追い掛けていた。


 太陽が傾き出した所で2人と1匹は砂浜に上がる。


 張り付いたシャツが若干冷たい。


「よし、着替えてバーベキューしようぜキャロル。」


「りょーかいです。」


 キャロルは鞄から着替えを取り出して茂みを探して歩く。


 さすがにその辺で真っ裸になるのはよくないだろう。


 レオンは既にその場でシャツを脱ぎ捨てていたが。


 キャロルが良い着替え場所を物色しつつ歩いていると突然腕を捕まれる。


「ぬおっ!!?」


 慌てて詠唱を唱えようとするが口を手で塞がれた。


 なんだ?


 敵襲か?


 じたばたと暴れるが敵は拘束を強くするだけで効果は見られない。


 やはり体を鍛えておくべきだったか。


 敵の姿だけでも確認しようと首を後ろに捻る。





「やあ、楽しそうだねキャロル。」


 犯人は魔王であった。


 輝く様な笑みの背後から真っ黒なモヤがあふれだしている。


 何故ここにいる。


 そして何故怒っている。


 混乱状態でポカンとしていると口を塞いでいた手を外された。


「・・・こんにちは?」


「ん。

 こんにちは。」


「えっと・・・何故ここに?」


「バヌツスから帰ってみたら女官からレオンとキャロルは仲良く海へキャンプに行ったって聞いてね。

 私はバヌツスで身を粉にして働いていたのに酷いと思わないかい?」


 またもこいつは仲間外れにされて怒っているのか。


 いなかったのだから仕方ないだろう。


 いくら何でも沸点が低すぎやしないだろうか。


 カルシウムが足りんのだカルシウムが。


「それで来てみたらキャロルとレオンはそれはそれは楽しそうに遊んでるしね?

 怒りたくもなると思わないかい?」


「はあ・・・そうなんですかね?」


 キャロルなら別に怒りたくもならないが一応曖昧に返事をしておく。


 魔王モードのこいつの面倒臭さは嫌と言う程知っているからだ。


「それに何に一番怒ってるかってね。

 キャロル、君も一応女の子なんだよ。」

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