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 全く浮きそうにないキャロルにレオンもおかしいなーと独り言を言っている。


「うーん…。

 あっそうだキャロル後ろ向け。」


 キャロルが後ろを向くと膝裏と肩にレオンの腕がかかる。


「うおっ?」


「こう寝っ転がった感じで力抜いてみ?」


 レオンに持ち上げられ海の上で寝っ転がる。


 力を抜くと何となく浮いてる気がしなくもない。


 太陽が眩し過ぎて上手く目が開けられないが。


「これ浮いてます?」


「うーん微妙に浮きそうだな。

 じゃあ今の力を抜く感覚でもう1回。」


 またひっくり返されて両手を持たれる。


 なんだか洗われている芋になった気分である。


 今度はちゃんと浮かべたが20秒程で足が砂に着いてしまう。


 一体何故なのだ。


「・・・まっ今回はいっか!

 また泳ぎに来て練習しようぜ!」


 レオンがニコニコと頭を撫でてくる。


 キャロルは何となく悔しくて1人で水の中にしゃがむ。


 海の中でそっと目を開けると太陽の光が水の中で筋を描く様に煌めき吐き出した泡がまるで宝石の様に輝く。


 キャロルは息を止めたまま暫くその光景に釘付けになっていた。


 この世界はまだまだ自分の知らない綺麗な物で溢れている。


 キャロルがざばっと海から顔を出すとレオンも潜っていたらしくざばっと顔を出した。


「綺麗だったな、キャロル!」


「・・・そうですね。」


 キャロルはレオンのこの裏表のない真っ直ぐな笑顔に弱いのだ。


 自分にはないそれが羨ましく眩しい。


 ルシウスに対しては素直になる等到底無理な話なのにレオンに対してそう出来ないのはレオン自身が素直だからだろう。


 だから無意識に素直に頷いてしまうのだ。


 これは一種のレオンの武器だとも言えるだろう。


「・・・レオンが羨ましいです。」


「へ?

 俺が?」


 レオンが首を捻るがキャロルは黙って頷く。


 何に対しても真っ直ぐに感情をぶつけ太陽の様に笑うレオンが羨ましい。


 キャロルには出来ない事だから。


「そうか?

 俺はキャロルが羨ましいけどな。」


 レオンが屈託のない顔で笑う。


「だってお前の魔術、すっげえ綺麗だしかっこいいじゃん。

 俺、キャロルの事すげえなっていっつも思ってるぞ。」


 やはりこいつはバカだが心の底から良い奴だ。


 キャロルは何となくこいつとは友達になってやっても良いかもしれないと考えていた。

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