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 キャロル達がそんな会話をしていると船員がやって来てリアムに何か耳打ちする。


「…あぁ分かった。

 殿下、キャロル嬢、夕飯の用意が出来ているのでホールに集まって欲しいそうです。

 俺はレオンを連れて来ますのでお二人は先に移動して下さい。」


「了解。

 じゃあキャロル行こうか。」


 海を見てみれば既に陽は傾き瑠璃紺から紅色へとコントラストを描いている。


 海というのが綺麗だと女官から盗み聞きした事はあるが確かに美しい。


「後でまた見に来たら良いよ。

 月と海も本当に綺麗だからね。

 さあ先に食事にしてしまおう。」


 ルシウスに腕を引かれ階段を下りる。


 皆食事に行くのか廊下はホールに向かう人々でごった返していた。


「みんな部屋で食べるのかと思ってました。」


「この船は始発から終着港だと2ヶ月かかるから。

 こうやって夕飯を他人と食べて催し物を見る事で飽きを減らすんだよ。

 まあ私達は1日だけだから部屋でも良いんだけどね。」


「催し物ですか?」


「そうそう。

 大道芸人や歌い手や劇団なんかが日替わりで披露するんだってさ。

 今日は確か有名な占い師だったかな?」


「占い師…興味をそそられませんね。」


「あーキャロルは嫌いそうだね。」


「自分が足掻いて選択してきた物が運命とやらで決まってたなんて腹が立ちますから。」


「まっそこは同意するよ。」


 人の波に流されながらホールに着くと船員に席に案内される。


 テーブルにはルシウスの名前ではなくノア様御一行様と札が乗っていた。


 そらそうだ。


 こんな普通の客船に王太子が乗っているだなんてバレたら大騒ぎになるだろう。


 席に着くと食前酒が運ばれてくる。


 リアムが手続きの際頼んでいてくれたらしくキャロルには麦酒が、ルシウスにはシャンパンが運ばれてきた。


 やはり奴は出来る奴である。


「明日からは野宿だからね。

 今日はのんびり飲むと良いよ。」


「分かりました。

 頂きます。」


 そう言われキャロルが麦酒に口をつける。


 キャロルが麦酒の1杯目を飲み終わる頃になってようやくレオンとリアムもやって来た。


 昼間と違い大分顔色が良い。


「あっレオン大丈夫なんですか?」


「おー大分楽になったわ。

 だからもうこれは迎え酒しかねえよな。」


 レオンが給仕に手を挙げて麦酒を注文する。


「…それ絶対やっちゃダメなやつだって知ってます?」


「大丈夫大丈夫。

 じゃかんぱーい。」

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