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「そう言えばキャロル、あんまり変な魔道具を渡すのはやめてくれるかい?

 呪いだ何だってめちゃくちゃ大変だったんだからね。」


「呪いですか?」


「何か眠ろうとしたら幻聴が聞こえるとか煙の臭いがするとかで令嬢達が騒いでたよ。

 離宮には火事で死んだ怨霊が住み着いてるだなんて怪談も出来上がってたし。

 キャロルの仕業だろう?」


「…あーそれは私のせいですね。」


「だろうね。

 相手はご令嬢なんだから手加減しなきゃダメだろう?」


 そこだけ気を付けてねと言ってルシウスはまた海を眺め始めてしまう。


 加減すれば大丈夫なのか。


 こいつはやっぱり色々間違っている気がする。


「…私だってね、毎日毎日くだらない報告を受け続けて正直疲れたんだよね。

 彼女達が大人しくなるなら多少のお灸は必要だと思うんだよ。」


「くだらない報告するなって一言言えば良いんじゃないですか?」


「ダメに決まってるでしょう?

 報告を拒んで離宮を荒れたままにしたりしたら王太子としての力量を疑われてしまう。

 それに今まで私が築いてきたイメージが崩壊してしまうからね。」


 やっぱりこいつ腹の中真っ黒である。


 自分のイメージの為に直接手を下さずキャロルの魔道具で間接的に仕置きをしようとしているのだ。


 というかどんなイメージを築いていたと言うのだこの男は。


「…キャロル嬢、殿下に対する国内の印象って聞いた事ないのか?」


「興味がないので知らないですね。」


「殿下は全ての民に慈悲深く清廉潔白な見目麗しい賢王になるべくしてなるであろう王子って言われてるんだぞ。」


 なんだその褒め言葉の盛り合わせは。


 というかそれは一体誰の話なのだ。


 キャロルはジト目でルシウスを見るがルシウスはどこ吹く風である。


「…何か凄い嘘に塗れたイメージが先行してるんですね。」


「そう?

 まあそのイメージを崩すわけにはいかないからね。

 手加減さえしてくれたらこれからも離宮に時々天罰を与えてくれると有難いんだよ。」


 一体どこのどいつがこいつを天使等と言い出したのだろう。


 どれだけ目が節穴なのだ。


 どう考えてもこいつは悪魔か魔王ではないか。


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