126

 運ばれて来たステーキを頬張る。


 付け合わせのトマトやチーズで何とか食べられるがこの塩辛さは如何な物なんだろうか。


「船では長期保存出来る物しか食べないからな。

 塩辛くても仕方ない。」


 キャロルとレオンの顔を見て宥めるようにリアムが言う。


 にしてもこれは塩漬けしすぎだろう。


 塩の味しかしない。


 麦酒で流し込む様に肉を飲み込む。


 塩の塊をかじっている気分だ。


 一気にテンションが落ちてしまう。


 キャロルがちびちびと塩漬け肉を消費していると前にあるステージに1人の少女が立った。


 白に近い銀髪に同じ色の瞳。


 抜けるように白い肌。


 神秘的としか言いようがない。


 他の席の旅客達は興奮気味に拍手を送っている。


「…誰なんですかあれ。」


「あれが噂の占い師なんだろうね。

 アルビノで珍しいから余計に信憑性を煽ってるんだよ。」


「へぇ、そんなもんなんですね。」


「…お前ら少しは好奇心持とうぜ。」


 キャロルとルシウスの会話に呆れたようにレオンが混じる。


 しかしはっきり言って興味が持てないのだからどうしようもない。


 ステージの少女は各テーブルにつき1人占いをしている。


 当たっているのか時たまざわめきが起こる。


「当たってるんですかね、あれ。」


「さあ?

 まあ私もさっきの少女みたいにあの男性が10年以内に病気になる事は分かるよ。

 見れば分かるじゃないか。」


 ルシウスの言う通り病気になると予言された男性はでっぷりと肥えていた。


 そりゃあ病気になるだろう。


「もうすぐこの席来るぞ!

 誰が占われるんだろうな!」


 興味の欠片もなさそうに料理を食べているリアムとは対照的にレオンは目を輝かせている。


「せっかくだしレオンだと良いね。」


「おー!

 俺にこいっ!」


 レオンが祈っていると少女がテーブルにやってくる。


 ルシウスをチラリと見た少女はテーブルにカードを数枚並べだした。


 選ばれたのはルシウスらしい。


 黙って並べたカードを捲った少女は少しの間沈黙してしまった。


 その姿に他の席でもざわめきや戸惑いが広がる。


 一体なんなのだろうか。


「…未来がバラバラなのです。」


 透き通る水のせせらぎの様な声で少女は言う。


「私には3種類見えました。

 1つは貴方が素晴らしい指導者となる未来。

 2つ目は貴方自身が譲り補佐として支えていく未来。




 3つ目は貴方自身が命をたってしまう未来。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る