無気力

@negerobom

yoru.yam

 車のシートに深く腰を掛けて、手元の煙草に火をつけた。これが僕にとって最大の惰性であって、つまりは最高の侮辱、自虐だった。

 

 美味しいとも思わない煙草を吸っていた。銘柄は英語で、読み方すら分かっていない。確かこの煙草は父親が吸っていたものだ。昔の風景をぼんやりと思い出す。

 煙を吸って吐くたびに自分が汚れていく気がした。実際にそう感じるのはこの後の事で、吸い殻を投げた頃には少しだけ息苦しくなるのだ。恐らく、いや、確かな事は、僕の身体には煙草が合わないのだ。

 窓の外に流れる煙を眺めていた。この青白い煙の行く先が何処か、どうして消えてしまうのか、と言う事を考えていた。つまりは何も考えていないと言う事だ。

 また短くなっていくそれは見なくても、指先の温度で分かる。吸い殻を投げ捨てるともう一本取り出して火をつけた。これで三本目だ。どうでもいい事を、習慣にもなっていない事をこうして繰り返すのは、間違いなく惰性であることを知っていて、そう考えるとまた気分が落ち込むものだった。

 何かあったかな、と考えていても答えは出ない。何もないからに違いない。狂おしいほどに、狂ってしまいたくもなるほどに、何もないからだ。

 僕は自分に対して、あるはずも無い苦痛を作り出した。それは当然、何も無い事が寂しいからだ。こうでもしないと痛みすら感じられない。寂しいという感覚の表し方も正しいのか分からない。自分を深く見つめるほど、何も分からない。なにをどう考えても、分からないままで終わるものだった。

 

 つまり僕は、何も考えていないのだ。

 




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