神木刹那という人物
「ははっ…。アハハハッ!」
突然笑い出した俺にホロウは驚いていた。
「神木らしい伝言だな」
「…そう、なのね」
「ん?知らなかったのか?」
「彼女の思い出までは共有されていないのよ」
「ああ…あいつ、あんまり自分のことを話そうとはしないからな」
ホロウに自分のありのままを反映させたら余計な事を話されると思ったからとか考えてそうだな、神木の場合。
あいつとはそこそこ長い付き合いだったけど、あまり密接にかかわることも少なかったからな。
いわゆる、友達の友達っていう関係だった。
そこらのクラスメイトよりかは信頼を受けてるって考えていいよな…?
あの伝言はよほど信頼してないと渡してこないと思う。
そういうことなら俺が雪菜を救うための【探索者】に選ばれたのは納得がいく。
慧架についても、『稲荷・雅』を託されたからということで納得いく。
そこで疑問が生まれた。
「なあ、雪菜を助けるために俺や慧架を選んだのはわかった。だが、なんで清本と桜宮が選ばれたんだ?」
最初の頃はランダムで選ばれたと言っていたが、こうして集められた理由も少しずつだがわかり始めている。
桜宮は…たぶん、神木エンタープライズと関係のある桜宮財閥の娘だからだろう。
しかし、問題は清本だ。
彼女は俺たちの中でも最もこの出来事に関係ない人間だ。
「確かに、清本叶波は私達には何の関係のない人物。それは言い換えようのない真実ね」
「じゃあ、ほんとうに清本は巻き込まれただけなのか」
「ええ、そうよ。彼女は本当にただの一般人」
「神木のやつ…目的のためなら他人も巻き込むような奴だったのか…」
なんというか、神木のことはもともと何を考えているかわからない奴だったが…こうも冷徹なやつだったのか?
こういった形で失望したくはなかった。
「神木刹那はどこか雪菜にどこか似ている子を探索者に入れたかったみたい。関係のない誰かを巻き込むことに関しては申し訳ないと思っていたわ」
「どこか似ている子をいれて、どうするつもりだったんだよ」
「さあね。これは憶測にすぎないけど…穂村炎真、あなたを前に進ませるためだと私は思うわ。神木刹那は私以上に不器用な性格なのだから」
「前に…進ませるため…」
「あと、御神楽慧架のためでもあるわ。雪菜に似ている子を選ぶってなった時、清本叶波がいることにより、みんなの平均の精神状態の測定が一番安定していたの。あの時は理由がわからなかったけど当時の御神楽慧架の精神は不安定だったからね」
そういうところまで考えて選ばれたんだな。
最初こそ、俺と慧架、桜宮がユグドラシルONLINEのトップ3の実力者だから選ばれたんだと考えていた。
でもそこに、清本がいるのは明らかに間違いだと思っていたのだがあいつが頑張っていると俺たちも頑張らなくてはと思えるようになった。
清本の発想で潜り抜けられたピンチもあった。
あいつはまだ自分に自信がついていないが、自信が持てるようになればきっと物凄く化ける。
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