ホロウと炎真

 「ぶぇっくしょん‼‼‼…あっ、やべっ!?」


 俺はくしゃみをしてよそ見をしたせいでレプリカの稲荷・雅に隙を突かれ吹っ飛ばされる。


『珍しいわね、穂村炎真。あなたがそんなことで吹っ飛ばされるなんて』


 天からホロウの声が俺に向かい言う。


「俺のミスったとこ見て茶々入れてくるところ、本当に神木みてぇだな…」

『そうね、私の性格は神木刹那のものが反映されているから』

「そうかよ…ああ、そうだったなそう言えば。んで?俺に話しかけてきたってことはなんか用でもあんのか?」

『特に。ただあなたを茶化しに来ただけよ』


 …なんだかますますホロウが神木に似てきたような気がする。

 いや、神木よりもホロウの方が若干だが素直だな。

 本当に、若干だけど。

 まさか、突然消えた理由が皿木豊羅に監禁されているからとは思いもしなかった。


『…そう言えば用があったわ。神木刹那からあなたへ伝言を頼まれてたの』


 とホロウが俺の前に姿を現す。


「はぁ!?なんで今まで言わなかったんだよ!?」

『それも神木刹那からの伝言だったのよ。雪菜のことに関して色々わかった後に話してほしい、あいつはどうせバカだから混乱するだろうしって』

「ば、バカってなんだよ失礼だな!…確かに俺バカだけどよ…。んで?その伝言ってなんだ?」

『神木刹那は雪菜のことを大切に思っていたの』

「ああ、それは友達としてって意味だろ?あいつ、雪菜にしか心を開いてなかったからな」

『いいえ、そういう意味じゃないわ。神木刹那は雪菜を恋愛対象として大切に思ってたの』

「…?」


 あまりに予想外の展開で俺は言葉が出なかった。

 言葉の意味は分かったつもりだが、頭は理解を受け付けなかった。

 

「…は?えっ?恋愛的な意味で…?」

『予想通りの反応ね。神木刹那は雪菜に恋していた。いえ、恋というにはあの思いの向け方は甘すぎる。『執着』に近いものを抱いていたの』

「は、はあ…」

『雪菜があなたに抱いている恋心に嫉妬していたのでしょうね。穂村炎真に抱いている感情を自分に向けられることは決してないと悟っていたから神木刹那はあなたに強く当たっていたのよ』

「…はっ?えっ?…ええええええええ~!?」


 突然の暴露に俺は時間差で驚く。


『まさか…気づいてなかったの?』

「いや、そう思ってたのは俺だけだと思ってたから…って俺は何を言ってるんだ?!」


 自爆してしまったので俺は自分の顔が恥ずかしさで熱くなっていくのを感じる。

 それに対しホロウのため息が聞こえてくる。


『はぁ…所謂両片思い状態だったわけね。そりゃあ神木刹那もイラっとすることだわ。これは私も同情する』

「そっか…、あいつも俺のことそんな風に思ってたんだな…。はははっ…」


 よかったと思うと同時に後悔もした、なんで素直になれなかったんだろうって。

 最後に雪菜に会った日だってそうだ。

 俺の想いを伝えることができたら、雪菜の悩んでいることに気付いていれば、あいつはあんな惨い最期を迎えることはなかったんだ。


『だからこそ、神木刹那は私に伝言を残したのよ』


 ホロウは伝言の内容を神木の声で伝えた。


『私の欲しかったものを得たんだから絶対雪菜を助けなさい。確かに体は救うことはできなかった。だとしても心を…想いを救えなかったらあんたのこと、一生恨むから。…これが彼女の伝言よ』


 


 

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