好きなアトラクション
私たちは『ユグドランド』でめちゃくちゃ遊びまくった。
最初に乗ったのはゴーカートだ。
現実の遊園地だと子供用しかない場合が多いが、なんといったってここは仮想遊園地だ。
大人になってもゴーカートに乗りたい!という人の願いをかなえられるのだ。
普通に乗ることもできるが、レースをすることも可能だ。
御神楽さんがレースをしたい!というので私もレースに参加することに。
「ひゅー!いけいけ~!」
御神楽さんはアクセル全開でカートを運転してた。
近くにいた小さい子供よりも大はしゃぎしていた。
ちなみにその近くにいた小さい子供は御神楽さんにドン引きしていた。
でも私は、御神楽さんが楽しそうなら何よりだと思う。
レースの結果は10人中、御神楽さんがぶっちぎりの一位。
私は六位という結果になった。
その次はジェットコースターに乗った。
「うぎゃあああああああ~‼‼‼」
乗った後に思い出した。
そう言えば私、絶叫系苦手だったということに。
叫び声をあげている私をよそに御神楽さんは「ひゃっほ~い!」とすごく楽しそうな声をあげていた。
そして乗り終わった後。
現実では座っている状態なのに、乗り終わった後腰が抜けるのを感じた。
「…叶波?大丈夫?もしかして絶叫系苦手だった…?」
と御神楽さんは私のことを心配してくれる。
「だ、大丈夫です…」
私は多少グロッキーになりつつもそう答える。
「無理させちゃったかな…?」
「いえ、本当に大丈夫です!絶叫系苦手なの忘れてた私が悪いんで…。それに楽しそうな御神楽さんを見て苦手もだいぶ和らいだかなと」
「そう…?ならよかった。あっ!写真のコーナーあるよ!行ってみようよ!」
と私は御神楽さんに言われるがまま向かう。
絶叫系のアトラクションあるあるで、山場のところで写真を撮ってくれるサービスもあった。
私たちが写っている写真を見つける。
御神楽さんは最高に楽しそうな笑顔をしていた。
かくいう私は風の抵抗で頬の肉が広がっていた。
それが無駄にリアルだった。
幸いなことに下を向いてしまっていたので、酷い顔をさらすということはなかった。
御神楽さんはこの写真のデータもグループチャットに送った。
「次、どこ行く?」
御神楽さんが私に尋ねる。
「なんかぼくの好きなところばっかり行ってるからさ。好きなアトラクションとかってある?」
「好きなアトラクション…ですか…?えっと…」
小さい頃、私はライブショーを見るのが好きだったな。
好きな魔法少女のショーを近場の遊園地でやるって知った時はお父さんに連れてってって強請ったことあったっけ。
メリーゴーランドと観覧車も好きだったな。
あとは…迷路とか変わり種だと『氷の館』が好きだったな。
『氷の館』はマイナス30度の世界を体験しよう!っていうものだった。
どちらにせよ、あんまり激しいのは好きじゃなかったなという記憶がある。
そのことを御神楽さんに伝える。
「そういうのが好きなんだね。なんか叶波らしい」
「御神楽さんがあまり楽しめなさそうでなんだか申し訳ないです」
「ぼく、特別絶叫系が好きとかではないよ?実はお化け屋敷が苦手」
「えっ!?意外ですね、そういうの好きだと思ってました」
「お化け自体は全然大丈夫だよ。むしろ面白そうだからあってみたいくらい。それよりもぼくは暗くて狭い場所が好きじゃないんだ。恵果と出て行く前までずっと一人でそういう場所にいたから…若干トラウマになっちゃってるんだろうね」
「えっと…あの…いやなこと思い出しちゃいました?」
「いや、そんなことはないよ。あっ、そうだぼくがお化け屋敷苦手っていったの内緒ね?なんか炎真に笑われそうだから」
「もしもみんなと行くってなった時はどうされるんです?」
「その時は理由つけてさりげなくどっかいくかな?トイレとか。それかわざと迷子になってみる…。まあ、これはみんなが心配するかもだから最終手段なんだけど」
「わぁ、策士ですね…。私は流れるがままにそのまま一緒に行くことになりそうだなぁ…。あっ、でもわざと迷子になる方法は…千染さんが発狂しそうでそれどころではなくなりかもですね」
私がそう言うと御神楽さんは「でしょ?」と笑いながら言う。
「でも、理由を言ってくれれば炎真さんも笑わないとは思いますよ」
「だね。というか、炎真もぼくとは違う理由でお化け屋敷苦手だったら面白いな。あっ、そうか炎真がビビってるのを見ることを楽しみにすれば苦手意識がなくなりそう」
そういう御神楽さん。
きっと風の噂を嗅ぎつけた穂村さんは今頃クシャミをしていることだろう。
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