あそびにいこう!
御神楽さん、オフアバターモードでユグドラシルONLINEにログインするようにって言ってたけど…。
オフアバターモードっていうのは読んで字のごとく、アバターを使わず素顔の状態でユグドラシルONLINEを使用できるモードだ。
普通に友達とどこか遊びに行く感覚で使うこともあれば、オフ会感覚で使うことができる。
御神楽さんには広場に集まるようにと連絡が来たので、私はフルフェイスタイプの端末をかぶり、ユグドラシルONLINEにログインする。
―ようこそ、『ユグドラシルONLINE』へ。本日はどちらへ向かわれますか?-
ゲームのアナウンスにそう尋ねられたので、広場に向かうということを伝える。
アナウンスは承知いたしましたと答えた後、私を広場の方へ転送する。
すると目の前に広がったのは賑やかな光景。
現実世界ではなかなか味わえない、わいわいとした雰囲気はいつになっても私の心をウキウキとさせる。
御神楽さんからメッセージが来ていたので確認すると、御神楽さんももう到着しているようだ。
「御神楽さん、どこだろう…?」
私はキョロキョロとどこかにいるであろう、御神楽さんを探すがそれらしい人物は見つからない。
というか御神楽さんほどの美しい人ならばすぐ見つかると思うんだけど…。
代わりに見つけたものと言えば、一か所に固まった人ごみくらいだ。
何か、有名人のアバターでも現れたのだろうか。
それにしても御神楽さん、どこだろう…?
待ち合わせの場所、ここであってるはずだけど時間になっても来ないし…。
意外と時間にルーズな人なのだろうか?
いやでも、到着してるって書いてあるし…。
私がただ単に場所を勘違いしてしまっただけなのかな?
私の方からもメッセージを送ってみようと試みる。
そんななか、あの人ごみの中から出てきた通りすがりの人の話が私の耳に入る。
「さっきの人、めちゃくちゃ綺麗だったね!」
「ほんと!女優さんかな?」
「えっ?女優?私、男の人かと思ってたわ」
「でも中性的で本当綺麗だったよね。こう…芸術みたいにさ」
そんな話だ。
中性的で綺麗…もしかして…と思っていると御神楽さんの方からまたメッセージが来る。
『なんかぼくの周りにめっちゃ人集まってるんだけど…助けてくれない?』
と語尾に涙目できゅるるんとした絵文字付きだ。
あの人混みの中心にいるの…やっぱり御神楽さん!?
た、助けてくれって言われてもいったいどうやって!?
『と、とりあえず…私、人ごみの中突っ込んでみますね!?』
『仮想空間だから意味ないと思うけど…怪我しないようにね』
私は勇気を出して人混みの中へ飛び込んだ。
どんっと人に当たるような感覚はあれど、痛みとかは感じないので思ったよりも早く人混みの中心へたどり着くことができた。
全身黒コーデでスタイリッシュな人物がいるなと思えば、それが御神楽さんだった。
御神楽さんは私に気付いたようで、こちらに駆け寄る。
「やっほー叶波、さっきぶり」
「な、なんなんですか?この人混み…」
「自分でこんなこと言うのはあれだけど、ぼくのこと芸能人と勘違いした人たちがこうやって集まっちゃったんだと思う…。なんか、SNSに勝手に写真上げられてるし…」
と言われて私はユグドラシルONLINEのトレンドニュースを見てみると御神楽さんの写真が上がっていた。
中には『稲荷・雅』の中の人がこんな人だったら許せる!なんてコメントもあったりして、私は心臓が跳ねる感覚がした。
「とりあえず、ここから離れた方がよくないですか?」
「うん、そうだね」
私たちは一端広場から離れることにした。
「はぁ…。『稲荷・雅』だと目立つと思ってオフアバターモードにしたのにな…」
「本当、すごかったですね…。そういえば、今からどこへ向かうんですか?」
私がそう言うと御神楽さんは二枚のチケット(バーチャルの物)を私に見せる。
そこには『ユグドランド』と書かれていた。
この施設はユグドラシルONLINE内にある仮想遊園地だ。
現実ではありえないようなアトラクションもこの仮想遊園地でならば可能にできる、夢のような場所だ。
「えっと…」
「お金のこと?」
「それもそうなんですけど…」
「チケット代は安心して?ぼくが全部おごるからさ」
「えっ?!そんな申し訳ないですよ!」
「ぼくが叶波の予定削ってまで誘ったんだからそれくらいはさせて?甘えちゃっていいよ」
それでも申し訳ないというと、御神楽さんはおごるったらおごるの!というので、お言葉に甘えさせてもらうことにした。
「ぼくさ、今まで一度も遊園地行ったことなかったんだ。友達っていう友達も雪菜と炎真を除いていなかったし。だからね、仮想空間でもいいから友達と遊園地で遊びたいなって…それで誘ったんだ。今日のことに関しては思い付きで行動しちゃったから…。優紗、炎真、千染も誘えばよかったな…」
「それならまた誘いましょう!仮想空間でもいいし、現実世界でも!」
「そう…だね、うん。そうするよ。じゃあさ、みんなに楽しんできます!っていう自慢しちゃわない?」
と御神楽さんはにやりと黒い笑みを浮かべる。
そして記念写真を撮影してくれるAIを呼ぶ。
『最高にいい笑顔、お願いします。それでは…はいチーズ!』
カシャっという音がした後、写真のデータが送信される。
私も御神楽さんもピースをしながら子供のような笑顔を浮かべていた。
そして御神楽さんは早速、グループチャットに写真を送った。
「さーて、みんなどんな反応するか楽しみだね!それよりも今は遊園地の方をもっと楽しもう!」
「はい!」
私たちはユグドランドに入り、思う存分遊ぶことにした。
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