大切な感覚
「思うんだけどさ、叶波は無理にでも自分が前に出て戦えるようにならなきゃって考えてない?」
「えっ?」
「『ユグドラシルONLINE』を始めたばっかで…こう…いきなり、ガチで死にかけるような戦いを強いられてる状況なわけでしょ?ただでさえあのゲームは感覚をリアルに感じ取れる。普通は怖いんだよ、怖くて仕方ないはずなんだよ」
ぼくや優紗、炎真のようにトップに君臨するような実力者たちはその感覚を忘れつつある。
その姿は勇気ある行動のようには見えるけれど、時にそれは自らの命を投げ捨てることも容易く思えてくる。
叶波の『怖い』という感覚はとても必要なことだ。
「御神楽さんは怖くないっていうことですか?慣れってすごいですね...」
「いや、慣れというよりは『麻痺』に近い。それが当たり前になりすぎて逆に危険がわからなくなってくるんだよ。例えるなら…小さい頃から高層マンションに住んでいた結果、『高い場所』っていうものが危険と感じなくなっていく…みたいなね」
「ひぇっ!?そ、それは確かにやばいですね…」
「でしょ?だからさ、叶波にはもしもの時のストッパーになってほしいんだ。優紗は…たぶん大丈夫そうな気がするけど炎真は所かまわず突っ込んでいきそうじゃん?」
とぼくがそう言うと叶波は「確かに…」とつぶやく。
「そういう立ち位置の人も必要なんだよ。戻りたくてもたぶん、ぼくは戻ることができないからさ」
ああ、ちょっと雰囲気が暗くなっちゃったかな?
ぼく、叶波にアドバイスしに来ただけなのに。
「よしっ!気分転換にちょっと抜け出してみない?」
「えっ!?あ、あの修行…」
「自分を追い詰めすぎてもなんかあれじゃん?だからさ、ちょっと抜け出してため込んだもの、スッキリ吐き出しちゃおうよ。…っていうかただ単にぼくがやってみたいことに付き合ってもらいたいだけなんだけどさ」
ぼくがそういうと、叶波は余計あたふたしてしまう。
もしかして、嫌…だったのかな?
「あっ、嫌なら無理しなくてもいいんだけど…」
「い、嫌じゃないです!むしろありがたいんですけど…、抜け出すってこと全部ホロウさんに筒抜けだなぁって思って。それをホロウさんが許してくれるかなって…」
と叶波が言うと、天からホロウの声が振ってくる。
『別に構わないわよ。言ったでしょ?無理に参加しなくてもいい、やりたいときにやりなさいって』
「だってさ、叶波。どうする?」
「そ、それじゃあ…よろしくお願いします!…ところで、どこに行くんですか?」
「一回、『ユグドラシルONLINE』の方にログインしてもらえるかな?場所は、ついてからのお楽しみってことで」
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