肝っ玉お嬢様

 私たちのこれからの行動が明確になっていった。

 今の私たちのすることはとにかく、強くなること。

 今までの敵は優紗や穂村さんでもなんとか勝てた。

 でも勝てたのだ。

 それだけではこの先の敵を打破していくことは難しい、そうホロウさんは言っていた。

 だとしたら私は優紗、穂村さんの2、3倍…いやさらにその倍強くなるための努力をしていかないといけない。

 

「御神楽さん、あなたはそろそろ寝室へ戻った方がよろしいのではなくって?」

「え~?」

「あなたは昨日の出来事をお忘れで?一応病人でもあるのですからしっかりと休むべきです。そうでないと早く治るものも治りませんわ」

「ぼくこんなにも元気なのに?見てよこの力こぶ」

「いや、ねえじゃねえか」


 とボケた御神楽さんに冷静にツッコミを入れる穂村さん。


「慧架様は貴様のような脳筋と違うのだ」

「誰が脳筋だコラァ!」

「慧架様は無駄な筋肉のない、引き締まったお体をしているのだ!」


 千染さんはめちゃくちゃどや顔で言う。

 ホロウさんはというと御神楽さんの方をじっと見る。


「えっ?ホロウ、なんでぼくのことじっくり見てるの?」

「身体検査よ。あなた、無駄な筋肉どころか贅肉もない。…痩せすぎね、もうちょっと肉を付けた方がいいわよ」

「ああ…このところまともに食べてなかったからかな」

「でしたら、なおさら早く戻りなさい!うちの者に栄養満点のお食事を用意させます。ホロウさん、御神楽さんを強制退室できますか?」

「まあ、やろうと思えばできるけど…」

「きょ、強制退室って…それはさすがに御神楽さんかわいそうなんじゃ?」


 私が思わずそういうと御神楽さんは私の後ろに隠れる。


「叶波、御神楽さんを甘やかしてはいけません。それにわたくしはなにも御神楽さんに意地悪をしたいわけではないのです。早くお体が万全の状態になってほしいからこそ言っているのですよ?」

「大丈夫だよ、優紗。その優しい思いはちゃんと私、感じているから。御神楽さんも分かってくれてますよね?」

 

 私が御神楽さんにそう問いかけるとこくんとうなずく。


「そうであるといいのですが…。さすがに少々言葉がキツめでしたわね。そう約束してくださるのであれば見学くらいなら許しますわ」


 私はそれを聞いてほっとすると、優紗は続けてこう言った。


「しかし!しかしですわよ?もし万が一、御神楽さんの体調に不調が見られたら強制退室させますので。その時は叶波、甘やかさないように」


 優紗はにっこりと圧のある笑みを私と御神楽さんに向けた。

 それに思わず私は御神楽さんと声をそろえて「はい…」と弱弱しい返事をした。


「これでは可憐なお嬢様というより肝っ玉母さんですね…」


 ぼそりと千染さんが優紗を評価する。


「千染さん…?なにかおっしゃいまして?」


 小言が聞こえたようで優紗はぐりんと首を動かし千染さんのほうを見る。

 そんな優紗を見て千染さんはビクッと肩をあげた。

 やっぱり優紗は一番怒らせちゃいけない人だと、実感した。

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