それでも変わらず接してくれる?

「その…何だ…『無性別』ってなると、体に支障はないのか?」


 穂村さんは気まずそうに御神楽さんに聞いた。


「ぼくの場合は『身体』というよりかは『心』の方が不安定になりやすいかな」

「それは…どういう意味でですの?気分が浮き沈みしやすいという意味ですか?」

「うーん…ちょっと違うかな。『性別の認識』が日によって不安定なんだ。ある時は男性の気分になるし、またある時は女性の気分になる」


 そして御神楽さんは暗い顔からまたいつもの明るい顔に戻る。


「こんな感じで暗い雰囲気になるからあんまり話したくなかったんだよなぁ…。まあ要するに?叶波や優紗のことを可愛いって感じたり、炎真のことかっこいいって感じたりするのが気分の波によって変わるってこと。最初に出会った頃はどちらかというと男性よりの気分で血の気が多かったっていえばわかりやすいかな?」


 御神楽さんがそう言うと私はなるほどと理解することができた。


「どちらかになれたら少しは安定するんだとは思うんだけど、そうなったらそれはもうぼくじゃなくなるような気がして…。だから、ぼくはずっとこの体のままでいることにしてるんだ。それでもさ…」


 と御神楽さんは言葉を濁す。


「それでも?どうしたんですか?」


 私は御神楽さんの続きの言葉を待った。


「急にしおらしくなって…御神楽さんらしくなくってよ?」


 優紗は相変わらず、厳しいが御神楽さんを心配しているのがうかがえる。


「どうせ、変わらず接してくれっていうんだろ?」


 と穂村さんは御神楽さんに聞く。


「だってぼく、こんな変なんだよ?普通じゃないんだよ?」

「御神楽さんが変なのはわかり切ってますわよ」

「俺の見た中でもトップに君臨するくらいの変人だよ、お前は」

「確かに変な人だと思いますし、でも…ふつうらしさもあるなって私は思いますよ」

「貴様ら!慧架様になんて口の利き方を!変人なんかじゃありません!あなたは特別なのです!」


 と御神楽さんに対しての様々な意見が飛び交う。

 


「まあ、なんだ。お前が普通だろうが、そうじゃなかろうが、俺らはお前に対する態度は変わらねえよ。『仲間』ってことには変わりない」


 穂村さんは御神楽さんに対してそう言った。


「そう…なの?」

「そうなんだよ」

「そっか…。そっかぁ…」


 御神楽さんは心につっかかてたものが取れたかのような、スッキリとした顔をしていた。


「ぼく、特別変だけど普通なんだね。ありがとう。このことに気付かせてくれた人たちに出会うことができて…ぼくは幸せ者なんだな」






 

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