羽賀悠我という人物

「それにしてもあのプライドの高い神木が選んだ人間だ。相当腕の立つやつなんだろうな」

「わたくしは家の関係で一度だけ神木刹那さんにお会いしたことあります。しっかりとなさっている方という印象でしたわ。雪菜さんの双子のお兄様はどのような方ですの?」


 と優紗が穂村さんに尋ねる。


「ぼくも雪菜から兄がいるっていうのは聞いたけど、結局一度も会わないままだったから気になるな。雪菜がいい子だったんだから悠我も同じような感じなのかな?」


 御神楽さんがそう言うと、穂村さんは顔をしかめさせる。


「悠我はくっっっっっそ腹黒い…雪菜とは正反対の性格だ。羽賀家も特別な家系みたいで本人曰く、こういう性格にならざるを得なかったって言ってたが…」

「へぇ…そうなの。それにしても特別な家系…ねぇ?どんなのか、聞いたことあるの?」

「なんだったけかな…。すごい説明するのが難しい…。占いがどうとか言ってたな…」


 うーんと唸る穂村さん。

 そんな穂村さんの隣で御神楽さんは「もしかして…。いや、まさかね…」と小さくつぶやく。


「御神楽さん?何か思い当たる節があるんです?」


 私がそう聞くと御神楽さんはこう答えた。


「炎真、もしくはホロウでもいい。雪菜と悠我の体のどこかにこれと似たような痣があるの見たことない?」


 と御神楽さんは服を捲り、自身の腹部だけを見せる。

 普段肌を見せる服装をしない御神楽さんの隠れた部分をいきなり見せられたので私達…特に男性陣は慌てて目線をそらした。


「いきなりなにしてんだよ!?」


 と声を裏返しながら穂村さんは御神楽さんに向けてそう言った。


「炎真何照れてるの?…って今は茶化してる状況じゃないね」

「その前に早くとお腹をしまいなさいな。はしたないですわよ?」

「へーい」


 優紗の言葉を渋々御神楽さんは飲むことにした。

 それに対し、服を突然捲った御神楽さんに対し、特に無反応だったホロウさんがかわりに答える。

 しかし、御神楽さんの腹部の痣には心当たりがあるようでそれには反応を示した。


「たしかに、場所は違えど、二人とも似たような形の痣があったわ。それが何か関係あるの?」


 とホロウさんが言うので私は痣の方に注目してみた。

 御神楽さんの透き通るような白い肌に不自然に赤い花のような形をした痣が存在していた。


「ぼくの家の仕来りでね、この痣が体に現れたものが『次期雅楽様』に選ばれる。ぼくが生まれたころにはぼくを含め、候補者が3人もいたらしい。結果的に本家の血を引いているぼくが選ばれたわけだけど。痣のあるものがぼくと同じ血族なのだとしたら…羽賀悠我の方の居場所はわかったかもしれない」

「つ、つまりどういうことだ?」


 穂村さんがそう聞く。


「つまり、ぼくと羽賀兄妹は遠い親戚ってこと。そしてぼくの考えたことが正しければ、今の『雅楽様』は羽賀悠我だ」

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