ご主人
「それと、私から話したいことがあるわ。『私』の制作者に対してよ」
そう言えばさっき、ホロウさんがぼそりと小さい声で話したいことがあるって言っていたっけな。
「あっ、そうか。ホロウってAIなんだもんね。あまりに自然に話してたもんだからAIだってこと忘れてたよ」
御神楽さんの言う通りのことを私も思った。
昨日、あんなにAIチックな姿を見たっていうのにこうして話しているとついつい忘れがちになってしまう。
「俺はてっきり神木が作ったもんだと思ってたんだが…違うんだな」
「部分的…というか基盤は神木刹那が作ったわ。でも、ほかの人たちにそれを託したのよ。穂村炎真、あなたの知り合いに協力者がいるわ」
「本当か…!?ま、まさか真田か…?いや、あいつは俺と同じくらいアホだからな…それはないか…」
穂村さんの友人の真田さん…不憫すぎる…。
「実際呼び出したほうが早いでしょう。
そう言うと、扉が現れる。
そこから一人の少年が現れる。
その少年を見たとき、穂村さんはとても驚いていた。
「ま、マメシバ!?」
マメシバと呼ばれた少年は穂村さんを見るなり、目をキラキラと光らせる。
「炎にぃ!久しぶり!」
マメシバくんは穂村さんにタックルに等しい勢いで抱き着いた。
その姿は本当に犬のようだった。
「穂村さん、この方とはどういう関係ですの?」
「こいつは…俺ん家の近所に住んでいた…まあ、所謂後輩だ。俺が引きこもってた時代に都会の方へ引っ越して行っちまってよ。それ以来会ってなかったんだ。だから…2年ぶりになるのか。大きくなったな」
穂村さんにそう言われるとマメシバくんはえへへと嬉しそうに笑う。
「僕は
そういうマメシバくんに私、優紗、御神楽さんはよろしくと挨拶をする。
が、不満そうな人が一人…千染さんだ。
「本当にこんなガキがあのAIの制作者なんですか?」
そういう千染さんに御神楽さんがもうちょっとマシな言い方をしろと頭にチョップを入れる。
「僕は製作者のうちの一人にすぎないよ。今手が空いてるのが僕だったからこうして出てきたの」
ホロウさんは確かに『私』を作った人たちって言っていたもんね。
「それでもすげぇよ。確かにお前、手先が器用だし頭もよかったもんな。そりゃ神木がお前に頼むわけだ…」
「ううん…、僕が手掛けたのは本当にほんの少しだけだから…。ほとんどはぼくの師匠が完成させたようなもんだよ。マスターだなんて呼ばれるのもおこがましいぐらい…」
というマメシバくんにホロウさんはこう話しかける。
「あなたは立派な私のマスターよ。私のデザインを考えてくれたのはあなたじゃない?」
「えへへ。ありがとう、ホロウ。なんかこうやって近くに来て話すのってなんだか新鮮だな…。いつもは師匠がテストしてるから」
「その師匠ってどんな人なんだ?」
穂村さんがそう聞くと、ホロウさんは大きなため息を吐く。
「一言で言うならば『ズボラ』よ」
ホロウさんのその一言にマメシバくんは苦笑いをする。
なんか随分前にホロウさん、「私の製作者がズボラなせいで…」って愚痴ってたような…。
「弟子であるあなたの方がしっかりしているわ。私はマスターと呼ぶなら間柴堅斗、あなたがいい」
「ぼくも人の子と言えた立場じゃないけど…余程なんだね」
と御神楽さん。
「気が付いたら部屋中カップ麺のゴミだらけになってるわ。髪の毛もひげもボサボサだし…私の製作者なら清潔感を大事にしてほしい」
そういうホロウさんを見て穂村さんはマメシバくんに「大丈夫なのか、そいつは…」と心配そうに尋ねた。
「で、でも腕は確かなんだよ?!もとはいいからしっかりと整えたらビシッと決まってかっこよくなるし!」
「それでなんであいつは今手が離せないの?」
ついにマメシバくんの師匠をあいつ呼ばわりし始めるホロウさん。
それに対してマメシバくんは困ったな…という風な顔をした。
「…アニメ鑑賞に忙しいから手が離せないって」
「また!?あいつあのアニメ今月だけで60回は見てるじゃない!あんのくそニート!」
いつもクールな印象のホロウさんが荒れている…。
「俺、なんか心配になって来たわ…」
「なんかあんなに荒れてるホロウさんみるのは…新鮮ですね」
「いつも冷静な印象ですものね。彼女も苦労してなさるんですね…」
「フッ…、今月だけで60回も同じもの見てるってどんな神経してるのか…私には理解できませんね」
「でもいいものなら何回でも見るもんじゃない?」
「慧架様がそういうならそうですね!」
「お前、さっきと言ってることブレてんぞ?」
「黙れ、野蛮竜」
「あぁ?んだとこの変態吸血鬼」
「「やめなさい」」
とまた穂村さんと千染さんが取っ組み合いを始めそうになるので優紗が穂村さんを、御神楽さんが千染さんを止める。
「炎にぃ、楽しそう…よかったね」
そんな様子を見ていたマメシバくんは嬉しそうにする。
「これでも最初ぼくらとあったころはだいぶ荒んでたんだよ?炎真、ぼくの胸ぐら掴んできてさ…」
プスススと笑いながら言う御神楽さんに穂村さんが慌てて…。
「バカ!それは言うな、恥ずかしくなってくるから…!ほんと悪かったから!」
口をふさごうと止めに入った。
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