新たな目的

 ホロウさんはさっそく御神楽さん、穂村さん、優紗、千染さんに呼びかける。

 それから数分経つとみんな集まってくれた。


「雪菜がまた夢に現れたって本当か!?」


 穂村さんが私に聞いてきたので私は「本当です」とうなずいた。


「それで?雪菜はなんて?」


 次は御神楽さんが聞く。


「皿木豊羅の本来の目的についてです。そして、雪菜さんが『稲荷・雅』を御神楽さんに託した理由と神木刹那さんと羽賀悠我さんについても聞きました」


 私がそう言うと、御神楽さんと穂村さんが一層強く食いついた。


「神木と悠我がどうなったのか分かったのか?!」

「雪菜がぼくに託した理由がわかったの?!」


 二人に関わることなので食いつきが強いのはわかるが同時に来たのでどちらから話せばいいのか分からなくなってしまった。


「お二人が知りたくて仕方がないことは十分にわかりますが…同時に聞いてしまっては叶波が混乱してしまいますわよ?」

「あっ…そっか…」

「すまねえ…」

「そうなると思って私が先に清本叶波から詳しいことは聞いているわ。穂村炎真には私から話す」

「あ、ありがとうございます、ホロウさん」


 私は御神楽さんに雪菜さんが『稲荷・雅』を託した理由を先に話すことに。

 ホロウさんは少し離れたところに移動し、穂村さんに神木刹那さんと羽賀悠我さんがどのような状態なのかを先に話すことになる。

 優紗は穂村さんと一緒にホロウさんのもとへ。

 千染さんは御神楽さんと一緒に私のもとに来ることになった。


「先に雪菜さんが『稲荷・雅』を御神楽さんに託した理由を話しますね」

「よろしく頼むよ」

「雪菜さんが御神楽さんに託した理由…それは、御神楽さんの心を守るためです」

「ぼくの…心を?」


 私は御神楽さんの言葉にうなずく。


「思い出したくないとは思うんですけど、『稲荷・雅』が来る前のころ御神楽さんの身には不幸な事ばかりが起きましたよね…?」


 私がそう言うと御神楽さんは顔を曇らせる。


「慧架様…」


 暗い顔をする御神楽さんを千染さんは心配する。


「御神楽さんと三佐恵果さんの身に起きた事故、そして雪菜さんの身に起きた事故…これらは皿木豊羅によって仕組まれたものなんです」


 そう私が言うと、御神楽さんは驚きを隠せない。

 それはそうだ、私だって聞いたときはショックだった。

 当事者である御神楽さんは私以上にショックを受けていることだろう。

 手をぐっと握り、体がわなないているのをみて私は何とも言えない気持ちになった。


「叶波、なんで二人は殺されなきゃいけなかったの…?」


 必死に冷静を装う御神楽さんだったが、怒りで声が震えているのがわかる。


「雪菜さんが殺された理由は皿木の本当の目的を知ってしまい、口封じに殺された…と言っていました」

「私の伯母が殺されたのは、皿木の本来の目的と関係があるので?」


 千染さんは私に聞いてくる。


「それは…雪菜さんはそこまで言っていなかったので何とも…。でも皿木が『御雅楽教』のだれかと手を組んで二人を狙ったのは確かだって雪菜さんが言ってました」

「『御雅楽教』のだれかってそんなの分かり切ってるよ…父さんだ。あいつならやりかねない」


 今までにないくらいドスの効いた声で御神楽さんは言い放った。


「父さんは自分にとって都合の悪い人間をすぐ消そうとする。現にぼくは一度殺されかけているわけだし。母さんの唯一の友人でもあった恵果のこと、人一倍疎ましいって思ってただろうね」


 

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