届けたい思い
「たぶんなんだけど、過去にミクルちゃんの…慧架ちゃんの家を襲撃したのは豊羅さんの仕業よ」
「そんな…!なんてひどいことを!」
私がそう言うと、雪菜さんも手を震わせながらこう言った。
「私もなんてひどいことをって思ったわ。見てしまったのよ、『御雅楽教』と結託して二人の抹消を試みていた豊羅さんを…。私はそれを慧架ちゃんに伝えることができなかったのを今も後悔しているわ。もうちょっと早く伝えることができれば、慧架ちゃんはあんなに心に傷を負うこともなかった。でも私は伝える前に死んでしまった…。『稲荷・雅』を慧架ちゃんに託したのは仇である豊羅さんの野望を打ち砕く鍵となってほしかったの。そういった意味での『心の保護』。全部私の勝手なのよね」
雪菜さんは無理して私に笑って見せる。
そして続けてこう言った。
「ほかにもね、豊羅さんによって苦しい目に遭っている人が2人いるの。神木刹那ちゃんと私の兄である羽賀悠我。どうやら私が死んでしまった後行方不明になってしまっているみたいなの。その手がかりがこの先で分かるはず。お願いします、どうか私の大切な人たちを助けてください」
雪菜さんは深々と私に頭を下げる。
「あ、頭をあげてください!」
「だって危険なことだってわかってて行かせようとしているんですもの、これくらいしないと…」
「もうここまで知っちゃったところもあるわけですし…。今更やめようにもやめることはできないと思うので…。だったら私は最後までやり抜いてみせます」
「…すごいなぁ」
と声を漏らす雪菜さん。
「えっ?なにがですか?」
「強い心を持っているなって思ったの。叶波ちゃんと優紗ちゃんになら炎真くんと慧架ちゃんのこと、任せられるわね!…今の段階で出せる情報はここまで。何かもっと力になることができればいいんだけど…」
「ここまで詳しく情報を出してくれただけで充分ありがたいです!私たちも私たちなりに頑張ります」
「ありがとう、叶波ちゃん。これから厳しい戦いになってくるだろうけど…どうか頑張って」
「はい!」
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