カモフラージュ作戦

「そうね、穂村炎真と桜宮・E・優紗は何かと目立つ存在だから…。ああごめんなさい?悪い意味ではないのよ?それにこの私がなんの考えもなしに潜入にいけと言うと思う?偽造するのよ、手筈は打ってあるわ」

「手筈…?」


 私は首をかしげる。

 するとホロウさんは私と千染さんを見るなり、ニヤッと黒い笑みを浮かべる。

 なんだかとっても嫌な予感☆


「清本叶波、三佐千染、あなたたち二人は『せせらぎ高校』の生徒として潜入しなさい」

「ちょっと待ってくださいよ、潜入って一体どうするつもりなんですか?!」

「そりゃ普通に制服を着て、堂々と入っていけばいいのよ」

「だからその制服をどうするつもりなんです?たとえ制服を手に入れられたとしても、芸能学科があるような場所です。顔認証システムなどの高度なセキュリティもあるでしょう?」

「そんなお粗末なシステム、いじるに決まってるじゃない。制服も裏ルートを使って入手するわ。簡単よ、マンモス校なんだから一人や二人増えたところで先生も生徒もわからないわよ」

「とんだ犯罪AIじゃないですか…。本当に大丈夫なんです?」

「少なくともお前よりかは安心だろうが。お前も犯罪擦れ擦れのことしてただろうよ。ストーカー野郎」

「だから私をそんな品のない輩と一緒にしないでもらえますかね?!」

「言い方はあまりよろしくなかったかもしれませんが、穂村さんの言うことに一理あります。現にわたくしたちはホロウさんのお力を借りて二回もサーバーの中に潜り込んで生還しています。安全面は保証できるかと」


 と優紗が言うので千染さんはなんとも言えないという顔をした。


「…まあ、百歩譲って私はその生徒になり切る作戦を遂行できる自信はありますが、清本叶波の方はどうなんです?」

「えっ?」


 私は突然のことに声を漏らした。


「こんな抜けている人と一緒に潜入捜査なんて成功するんですかね?」


 千染さんのその言葉が私の心にグサッとふかく突き刺さる。

 実際のところ成功できる自信もないし、正論なので言い返せないのが悔しい。


「お前、もうちょっとデリカシーってのを考えろよ!」


 穂村さんが言い返せない私をかばってくれた。

 …優しい。


「千染…叶波はまあちょっとまだ初々しいところはあるかもしれないけどさ、やるときはやる子だよ?」


 御神楽さんも私のことを持ち上げてくれた。

 そのことに嫉妬してか、千染さんは若干また私のことを睨む。


「こら、睨まない妬まない。この信頼の差は日頃の行いを改めないと埋まらないよ?」

「…わかりました。あなたがそこまで言うのなら。いいですね、清本叶波?私はあなたのために納得したのではない!慧架様のためだ!」

「は、はぁ…」


 千染さんのあまりの圧に私はそういうしかできなかった。


「制服の方はまた日を改めたときに来るから、そこは待ってて。ほかになにか聞きたいことは?なければ各自解散で」


 とホロウさんは言う。

 

「それじゃあ私はここで。モコのお世話もしなくちゃなので」

「ぼくもモコの様子みてもいい?」

「はい…いいですけど?」

「慧架、この前お前…噛みつかれてたけど大丈夫なんか?」


 穂村さんが言うと千染さんが食いつく。


「慧架様に噛みついただと!?どこのどいつだその輩は!?」

「モコは人じゃないよ、電脳ペット。それに噛みつかれたのはぼくが悪いの。もともと臆病な性格の子なのにいきなり触ろうとしたもんだから抵抗したんだと思う」

「私もあの後、注意したし…たぶんよほどのことがない限りは噛みついたりはしないと思います」

「優紗はどうする?一緒に見に行く?」


 御神楽さんは優紗を誘う。


「構いませんが、少しの間だけですよ?あなたは一応けが人なのですから…」


 と優紗は御神楽さんの監視役という立場でついていくことに。


「千染は?このあとどうするの?先に帰る?」

「あなたがいるところ、どこまでもお供します!」

「だってさ叶波。千染も行って大丈夫?」

「はい、まあ大丈夫…だと思います。穂村さんはどうしますか?」

「悪いな、今さっきおふくろから用事を頼まれちまってよ。俺はこれで」

「わかりました。穂村さん、お疲れ様です!」

「お疲れさまですわ」

「おつ~」

「おお。じゃあな」

 

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