修行開始!

 というわけで、私はあの部屋に入ろうとする。

 だがその前に、ホロウさんからメールが一通来た。


『今日は一日休みなさいって言ったのに…。三佐千染と穂村炎真がさっそく強化プログラムを受けに来たわ。ということは…あなたも桜宮・E・優紗も来るんでしょ?』


 という内容だ。


『居ても立っても居られなくって…。優紗は少し遅れてくるそうです。御神楽さんを優紗の家に置いておくって言ってました』

『そう、わかったわ。先に来ている二人はもうとっくに始めてる。強化プログラムは個別だから、焦って来る必要はないからね。来るのが遅いからって置いてけぼりにはしないわ』

『そうなんですね!助かります、ありがとうございます』

『お礼は、特訓の成果でしてほしいわね』


 と、相変わらずのホロウさんの厳しい言葉が返ってくる。

 でもなぜだろうか、決して冷たい感じはしないんだよね。

 人のような温かみがある。

 AIなのがいまだに信じられない。

 さすが最新型のAI…と言うべきなのだろうか?


『とりあえず今日はみんな軽めに設定しているわ。帰って来たばっかりで疲れているのは変わりないし』


 私はその言葉に安心し、『わかりました!』と返事し、あの部屋へを向かった。

 …はずだった。

 

「嘘じゃん‼‼‼全っ然軽くない~‼‼‼」


 なんとなく!なんとなくね‼‼

 そんな予感はしてたけどね‼‼‼

 な~んで都合のいい方に考えちゃうのかな~!私は‼‼‼

 こういうところホント私の悪いところだぞ‼‼‼‼

 ついたと思った途端、目の前にいたのは『稲荷・雅』だった。

 なんで?御神楽さんは優紗の家で療養中だから参加しないのに…と思っていたらホロウさん曰く、『稲荷・雅』の戦闘データを抽出してこのプログラムに搭載したらしい。

 でも、私のレベルに合わせて本物の『稲荷・雅』よりもだいぶ弱体化させたようだ。

 弱体化でこの強さって…。

 いや、これはただ単に私のレベルが低いだけ。

 今のレプリカ雅のレベルに勝ててようやく次に進めるのならば、乗り越えていくしかないのだ。

 そうこう考えてるうちに、レプリカの『稲荷・雅』が私に襲いかかってくる。

 扇子を私に向かい、振りかざしてきた。

 私はそれを自分の武器であるレイピアで受け止めるが、衝撃が強すぎて吹き飛ばされてしまった。

 かべに直撃したら結構なダメージを食らってしまう。

 衝撃を和らげないと、と思い私は『アクアバルーン』を繰り出す。


「うっ…!」


 和らげたつもりではいたのだけど、今の『アクアバルーン』の強度では補いきれないほどにあの攻撃は強かった。

 MPを消費すらしていない、ただ武器を振りかざしただけなのにあんな衝撃を与えることができるなんて…。

 うだうだと考え込んでいるうちにどんどん攻撃を仕掛けてくるレプリカ。

 攻撃を防ぐのに精いっぱいで自分から攻撃を仕掛けることができないでいた。

 隙を探そうにも、その隙を見つけ出すことができなかった。

 投げやりで攻撃を仕掛けようと思った途端、ホロウさんの声が天から降ってくる。


「みんな、時間切れよ。今日はここで終わり。今日やった特訓で自分の反省点をしっかり考えてから次の特訓に挑みなさい」


 というものだった。

 それが聞こえたとたん、レプリカの『稲荷・雅』は姿を消した。


「なにか話したいことがあれば、いつもの場所につながる扉を用意しておくわ」

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