問題は山ほどある
その後、御神楽さんに自分が気を失っている間にどういうことが起きたかの説明をみんなでした。
「無事、御神楽慧架が目を覚ましたという第一関門は突破ね」
「迷惑かけたね」
「そこは気にしないで。ああでも…あなたには今度の探索には出さないつもりよ。ゆっくり休みなさい」
「さすがに次の時までフルに活動できるかと言われたらイケるっていう自信はないしね。うん、そこは素直に従うよ。心配なのは戦闘力くらいかな?」
「あなたの代打は三佐千染にやらせるわ」
「うーん、それでもちょっと心配だったりするんだけど…」
と御神楽さんはチラッと私たちを見る。
それをみて優紗と穂村さんはムッとする。
「冗談だよ、二人とも。そんな怖い顔しないで?優紗と炎真が強いのはちゃんと知ってるからさ。ぼくが心配なのは千染だよ」
と御神楽さんは言う。
「御来様…!なんとお優しい…!」
と千染さんは御神楽さんに心酔しきってる。
「そういうのいいから。それに、ぼくはもう『雅遼御来』って名前は捨てたんだ。今のぼくの名前は『御神楽慧架』だよ。みんなもこっちでぼくのことを呼んで。今更呼び方変えるのめんどうでしょ?」
「あー…、そうだな。俺は慧架って呼ぶ方がしっくりくる」
「わたくしもですね。当の本人がそうしてほしいと仰るなら」
「はい、私もそうします」
「うん、ありがとう。ああ、そうだ。ぼくが千染に言いたかったことは『吸血鬼・ブルート』のアバター、皿木に奪われたんでしょ?短期間でぼくの代打になれるのかな?って」
「その件は問題ないわ。私の強化プログラムをぶっ通しでやるから」
とホロウさんは黒い笑みを浮かべる。
「ぼくもそれ必要なのかな?」
「あなたには必要ないわ。勝手にあなたのアバターを調べさせてもらったのだけど、ステータスがカンストしてたもの」
「か、カンスト!?」
それを聞いて私は声を出して驚いた。
「何をどうしたらそうなるんだよ!?課金でもしたのか?!」
「いや、言うほど課金はしてないよ?もともとこのアバター自体がちょっと変だったんだよね。気が付いたらぼくの手元にあったし」
「それは本当なの?」
「うん。記憶を全部取り戻したから言えるんだけど…ぼくのアバター、『稲荷・雅』じゃなかったんだよ」
すると、御神楽さんは何かを思い出したかのようにふふっと笑いながら次の言葉を言った。
「だから最初に会った時、炎真がぼくの胸ぐら掴んできた理由がわかったよ。このアバターは羽賀雪菜のものだって」
と御神楽さんがいうと千染さんはぎょっとした後、穂村さんに突っかかってきた。
「焔竜、貴様‼‼‼慧架様の胸ぐらを掴むとは何たる無礼だ‼‼」
「うわっ!なんだいきなり!?」
「千染、そういうのいいってば」
と御神楽さんは穂村さんに突っかかる千染さんを制する。
なんかこういう御神楽さんを見るの、新鮮だな…。
「ぼくがその…雪菜の精神の器になる人物だっていうのが確定しているなら、『稲荷・雅』が巡り巡ってぼくのところにたどり着いたなら納得だね」
「もし仮に、もとのアバターが戻ってきたらその時はどうするの?」
とホロウさんは御神楽さんに質問する。
御神楽さんはちょっと考え込んだ後、こう言った。
「『稲荷・雅』は炎真に渡すかな」
「えっ?いいのか、それで?」
「うん。だって雪菜のものだもん、炎真に渡すでしょ普通。…でも、この【探索者】としての役目が終わるまで『稲荷・雅』を預かっててもいいかな?」
「ああ、もちろん。雪菜の意志を…よろしく頼む」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます