眠れる狐を呼び起こす歌

「この曲をさっそく御神楽慧架に聞かせてみましょう。穂村炎真、端末を貸してくれるかしら?その楽曲のデータを今から私の体に取り込むと同時に、御神楽慧架の心の奥深くに入れるかどうか、試すわ」

「ああ、わかった」


 今心がぐちゃぐちゃになっている御神楽さんを落ち着かせる方法…完璧に合っているかどうかはわからない。

 それでも少しかは落ち着かせられることができたら…と私は小さい希望を胸に抱く。

 ホロウさんは穂村さんの端末に触れ楽曲のデータを自身に取り込む。

 

「楽曲データ取り込み完了。次、御神楽慧架の精神の干渉の準備を始める」


 ホロウさんは両手で御神楽さんの頭に軽く触れる。

 すると彼女の周りにやたら電子チックな数字が表れる。

 そこには0%から少しずつ数字が増えている。

 まるで何かのアプリをダウンロードしているかのような風景だ。

 その時のホロウさんの様子は彼女は本当に人間ではないのだと感じさせるほど機械じみていた。


「ふぅ…。この曲のおかげか、さっきよりは御神楽慧架の精神状態は安定しているようね。でもまだ干渉できるほどではない…情報が重すぎるせいかさっきから38%より先に行けないわ…!」

「まだ半分以下…なにか策はないのか…」


 と穂村さんは苦虫を食い潰したような顔をする。

 

「50%に到達できればイチかバチか、干渉できるのだけど…」

「せっかくここまで状況が整ったの思いましたのに…御神楽さん…」


 と優紗は御神楽さんの右手をぎゅっと握る。


「あら?39.5%…少しだけど進行率が上がったわ!みんな、御神楽慧架に語り掛けて!」

「慧架…いや、御来!起きろ、起きてくれ!せっかくこうやって再会できたのによ…このまま目覚めないなんて許さねえぞ!」

「わたくし、まだ一度も御神楽さんに勝てていません…。一生起きないまま勝ち逃げは許しませんわよ?」

「ああ、そうだ!勝ち逃げすんじゃねえ!」

「御神楽さん。私…あなたが私に最初に過去のこと相談してくれたこと、とてもうれしかったです。私なんか、役に立たないと思ってました。でもあなたは私を頼ってくれた。御神楽さんが苦しい思いをしているなら私も一緒に戦います!だからどうか、起きてください!恵果さんと約束したんでしょう?彼女の分まで生きていくことを。強く生きていくことをここであきらめちゃ、恵果さん…天国で悲しんじゃいますよ?」

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