悪魔の頂点
決心がついたところでようやく御神楽さんの動きを止める作戦を実行することに。
作戦は雪菜さんの精神データが入っている小箱を御神楽さんに触れさせること。
その役目を担うのがブルート。
私、優紗、穂村さんのやることはブルートから視線をそらすように誘導することだ。
「ヘマするんじゃありませんよ?わかってます?」
「うるっせぇな!わーっとるわい!てめぇこそ俺らの邪魔すんなよな?」
「もう注意するのも面倒に思えてしまうほどの挑発に乗りやすい性格ですわね…」
優紗はそんな穂村さんとブルートをみてため息をついた。
「ですがまあ…本当に邪魔をするのであればわたくしもそこは遠慮せずに畳みかけますので。さきほどあなたの言った言葉、お忘れになったと思わないでくださいましね?」
にっこりと笑っている優紗ではあるが、やっぱりクイズの時に言われた言葉めちゃくちゃ根に持っているんだな…。
わかる、わかるよその気持ち…。
そりゃ根に持ちたくもなるよね…。
「あなたお嬢様でしょう?そこらへんは広い心で水に流せませんかね?」
「それはお嬢さまがどうとかというのは関係ないと思いますけれど?…ですが今はこのようなこといつまでもいっている場合ではありませんわ、とにかく作戦実行です。まいりましょう」
と、優紗が作戦の実行を持ち掛ける。
ブルートは「ああ、そうですね」と言った。
私は優紗が実行を持ち掛けてくれてほっとする。
別に優紗じゃなくて、穂村さんが持ち掛けてくれても安心はするのだけれど…ブルートの方が納得しなさそうだ。
だから、優紗が言ってくれたのが一番正解だと私は思う。
私だと、もっと言うこと聞いてくれなさそうだし…。
「自信をお持ちなさい、叶波。大丈夫です、わたくしたちはやれますわ」
と優紗は暗い顔をしてしまった私を慰めてくれた。
私だけ、暗い顔してちゃ…いけないよね。
うん、精一杯頑張ろう!
私は気合を入れるため、両頬をパンッと叩く。
「ありがとう、優紗。私のできる限りのことをやってみるよ!」
「その意気です!」
「友情が深まるのは勝手ですが、さっさとやりますよ?」
「わかっています。一々横からひと言入れくるのはおやめくださる?」
「おや、注意のつもりなのですがそう捉えたのですねぇ…。意外と頭が固い方だ」
「てめぇの方が学習しねえよな?その余計な一言がイラつかせるってことをよ…。んじゃあ、先陣は俺が切らせてもらうぜ」
と最初に御神楽さんこと『稲荷・雅』に突っ込んでいったのは穂村さんだ。
穂村さんはこういう時に頼もしいと改めて実感する。
「自分事ではあるけどよぉ…。慧架、お前の隠してた力ここでようやく実感できるんだな…。楽しみで武者震いしてきたぜ?」
と穂村さんはやけに嬉しそうに御神楽さんに語り掛ける。
「野蛮ですねぇ…。ただの戦闘狂じゃないですか…」
やれやれとブルートは呆れ厭きれ言う。
「その戦闘狂なところが彼の…『焔竜』のいいところですわ」
「本当だね。見ていて気持ちがいいと思える戦いぶりだよ…」
荒っぽいが、温かい心を持っている穂村さん。
だが、今の彼はまるで全てを焼き払わんとする地獄の業火のような荒々しく、轟々しい戦いを繰り広げていた。
まさに悪魔の頂点と名乗るにふさわしい、私はそう思った。
「見ているだけではいけませんわよ、叶波。わたくしたちも参りましょう」
「そ、そうだね!」
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