作戦開始

「この感じだと、正直に言うまで放してもらえなさそうですね…。私は、私の家系は御雅楽教に仕えている一族でした。そして私が初めてあの方にあったのが、10年前…。私が8歳の時です」


 とブルートは自身と御神楽さんとの関係を言う。


「10年前が8歳…?ってことはお前、俺と同い年かよ!?」

「余計なことで驚かないでくれます?それにまあ、見た目のことに関して言われるのは慣れているので驚かれるのに今更ショックなんて受けませんが」


 と落ち着きながらブルートは言う。

 この落ち着きが彼を年相応以上に見せさせる理由なのかもしれない。


「私とあの方との関係は話しましたよ?私からはもう話すつもりなどありません。それでは本題に戻ることにしましょう」


 と自身の話から遠ざけようとする。

 あまりこれに関して長引いてしまっても、今、御神楽さんの体と心に負担がかかってしまう。


「とにかく私は先程の内容が一番手っ取り早いと思っています。それが納得いかないというのなら、私は手助けしません」


 と自身の意見に食い下がるつもりはないようだ。

 あまり負担はかけたくなかったのだけれど…悔しいことに桁違いの御神楽さんの強さに優紗や穂村さんはわからないけれど、私は到底勝つことはできない。

 さらに優紗と穂村さんと互角の強さを持つであろうブルートが手助けしてくれないとなると…結構厳しい展開になってくることだろう。


「…悔しいことに、ごかくのつよさをもつであろうほかにいい案が思い浮かびませんわ。わたくしはその案に乗ります」

「おい桜宮、マジかよ?敵の提案だぞ、大丈夫か?」

「でしたら穂村さん、あなたが考えてくださる?」

「うぐっ…」

「敵の提案なのだから、いいのではありませんか?わたくしたちよりもこの空間について詳しいでしょうし。それで協力してくださるのなら、利用する価値はありますわ」


 と微笑む優紗。

 なぜだろうか、いつものはんなりとした笑顔より今の笑顔は黒さを感じる。

 別の意味で修羅場をくぐっているような気がする。


「『エルフ・ロゼッタ』、あなた大人しそうな顔して…結構黒いんですね」

「それぐらいでないとこの先やっていけませんわ。そのお言葉、お褒めの言葉として取っておきますわね」


 優紗とブルートの背後に龍と虎…ではなく、妖精と吸血鬼が見えたような気がした。


「…こわっ」


 とブルートに言い返す優紗を見て、穂村さんはそうつぶやくのであった。


「叶波、あなたもブルートの提案に乗る…ということでいいのですよね?」

「うん、そうだね。ほかに早く済ませられる方法がないのならそれに従うしかないと私は思うな」

「だ、そうですわよ、穂村さん。3人中2人が提案に乗ると仰っています。多数決で構いませんね?」

「…わかったよ。あんまりぐだぐだいうのもよくねえな。…それに従ってやるよ」

「最初からそう言ってくださいます?…まったくどんくさい人たちだ」


 ブルートの挑発に穂村さんはまた「あぁ?」とのってしまうが、そこは優紗がまた「おやめなさい!」と叱ってくれたことで事なきを得る。


「私的にもこの小箱は組織の大事なものだ。そうそう容易く敵に渡すわけにはいかない。この小箱を持って近づく役周りは私が受け持つ。文句は言わせませんよ?」

「えっと…じゃあ私たちは、御神楽さんの視線をそらすように行動すればいい感じで…?」

「そうですね。そうしてください」

「…まあそれはわかったが、成功した後慧架に手出しなんてするんじゃねえぞ?」

「それに関しては保証はしません」

「その時はこちらも全力であなたをたたきのめしますので、そのおつもりで」

「本当に物騒なこと言いますね、いいところの育ちのくせして」

「ふふふっ…。敵に戻ったら情けはかけませんわ」

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