方法
「んで?まずどうすりゃいいんだ?」
穂村さんがそう言うと、ブルートは袖から小箱を取り出す。
もしかして雪菜さんの精神データが封じ込められているあの小箱?
「これは…」
と優紗はつぶやく。
「黒景のところに行ったのならわかるでしょう?」
「…案外すんなりと渡すのですね?」
と優紗が小箱を取ろうとするとブルートはその手を躱す。
「あ?なんで渡さねえんだよ?」
「私はただ渡すために取り出したのではありませんよ?」
「では、取り出した理由はなんですの?」
「これをあのお方に触れさせることができれば、一時的にではありますが暴走を止めることができます」
「なんとも微妙な答えだな…」
「えっと…なんで一時的なんですか?」
私がそう聞くと、ブルートはこう答えた。
「どうやらこの小箱は雅楽様が…いえ、今は御神楽慧架と名乗っているのですが…。御神楽様が触れなければ意味がないもののようでね…。詳しいことは教えられていないので理由はわかりませんが。黒景の時に経験をしたかもしれませんが、御神楽様がこの小箱に触れると、脳内に一気に情報が流れるように仕組んであるようです。それでまた思考回路をショートさせれば一時的に暴走を止めることが可能です」
そう言ったブルートは少し、ばつの悪い顔をしていた。
「それでショートした後はどうするんだよ?また暴走しちまったら元も子もねえだろ?」
「さあね、そのあとはご自分たちで考えたらどうです?」
そしていつもの意地悪な顔に戻りブルートは言った。
それに対し穂村さんは「うっわぁ、ケチだなぁ?」と頭を掻きむしり、むしゃくしゃしながら言った。
「さきほどなにやら納得のいってないような顔をしていらっしゃいましたが…あなた自身もこの方法に納得がいっていないのですか?」
と優紗はブルートに聞く。
「…はぁー…そうですよ、納得はいっていません。これ以上精神に負担をかけてしまえば、御神楽様の人格は破綻してしまうかもしれませんから」
「は、破綻!?」
そのあまりに不穏な言葉に私は声を出して驚く。
「なんだよ!それ、めちゃくちゃ危ないじゃねえか!」
「そうですよ、危険だ。だが、皿木の目的はその御神楽様の人格の破綻が目的です。…そうしないと、『器』をつくる計画が成功しませんからね」
『器』…?
それって雪菜さんの精神データを入れるための代打ってこと?
その対象人物が御神楽慧架さん…いや、雅遼御来さんってことに?
そのためだけに、御神楽さんはあんなに苦しめられてきたってこと?
だって御神楽さん、今もあんなに苦しそうにしているんだよ?
泣いて、叫んでいるんだよ?
「何か他の方法がないのかと言いたげな顔ですが…。あなたたちにできます?現最強のプレイヤーである『稲荷・雅』に正当に勝つことは。…無理ですよね?強さの次元が違いすぎる。多少卑怯で歪んだ方法でないとあの方を倒すことはできませんよ?」
その言葉に穂村さんと優紗は言葉を詰まらせる。
「あの…あなたも御神楽さんの破綻なんて望んでないんですよね?」
「えぇ、まあそうですが…。一番手っ取り早い方法はこれしかない」
「私は第三遊戯の時、御神楽さんの過去についてを見させられた」
私がそういうと穂村さんは「本当か?」と聞いてきたので私はそれにうなずく。
「ブルート、あなたは一体御神楽さんの何を知っているんですか?なんで、過去のことを知ってたんですか?」
「私は、だたの『御雅楽教』の信者ですよ。それ以下でもそれ以上でもない」
とブルート。
「じゃあ、なんでただの信者が御神楽さんの過去を知ってるんですか?私はさっきからそれを聞いているんですけど…?」
「…あなた意外としぶといですね?」
「それは誉め言葉として取っておきます」
私がそう言うとブルートは明らかに嫌そうな顔をする。
たぶん、私みたいなタイプ苦手なんだろうなぁ~。
「観念していった方が楽なんじゃねえか?」
「フッ…。まるで拷問してるかのような言い方ですね…それ」
「拷問なら本当に爪を剥いでやろうか?」
「穂村さん?おやめなさいな、こんな時に…」
おもむろにブルートの手をつかみ、ちょっと本当に爪を剥ごうとした穂村さんを、優紗はさすがに止めに入った。
それに対して穂村さんは小さく「冗談だっての」と不満げに言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます