記憶ダイブ・ディープ 3

 次の場面にうつった。

 その光景を見て私は言葉を失った。

 なぜなら、目の前に映ったのは火の海だったからだ。

 どういった経緯でこうなったのか分からない。

 でも私はすぐに御神楽さんの安否を心配した。


「恵果…どこ?恵果!!」


 御神楽さんの声が聞こえる。

 あの人自体は無事なようだ。

 でも、恵果さんは…?

 あの様子だと、この日の海の中で離ればなれになってしまったようだ。


「…御来」


 とか細い恵果さんの声が聞こえる。

 それを聞き逃すまいと御神楽さんはまた恵果さんを呼んだ。


「恵果!どこなの?!…ゴホッゴホッ!」


 煙を吸ってしまったのか咳き込む御神楽さん。

 そんなの関係ないと御神楽さんは恵果さんの声が聞こえる場所を探した。

 そんななか御神楽さんは目を見開く。

 どうやら恵果さんを見つけたようだ。


「恵果!」


 御神楽さんは恵果さんを見つけた。

 でも、運悪く瓦礫の下敷きになっていた。


「御来…私を置いて逃げて」

「なんで…?なんでそんなこと言うの?嫌だよ‼‼‼」

「私を助けてたらあなたが逃げ遅れちゃう」

「嫌だ嫌だ嫌だ!だってぼく言ったじゃん!ずっと恵果と一緒にいたいって!」

「あなたはもう、私がいなくても立派に生きて行けるでしょう?友達だってできたじゃない」

「友達ができたって…恵果がいなくちゃ意味がないよ!」

「いい加減になさい!」


 珍しく恵果さんが御神楽さんを叱る。

 御神楽さんも叱られ慣れていないのか、ビクッとなる。


「私はもう、助からないわ」

「嘘だ…」

「嘘じゃないわ。瓦礫が体のいたるところを貫通してしまっている。今こうして話していられるのも奇跡だわ」


 御神楽さんの足元を見てみる。

 するとそこには恵果さんの物であろう血が水たまりのようになっていた。

 医学の知識がない私でもわかる。

 これは助からないほどの出血をしていると。

 恵果さんは何やらごそごそとした後、御神楽さんの方へ手を伸ばした。


「御来、私のお願い聞いてくれる?」

 

 恵果さんは御神楽さんに何かを渡す。

 あれは…私が御神楽さんと初めて会った時に身に着けていたイヤリング…?

 御神楽さんはそれを見るとなにか覚悟した顔をした。

 そしてボロボロと涙を流す。


「御来は生きて、生き抜いて。あなたは強い子だもの、どこでだって生きていけるわ」

「ぼく、強くなんかないよ…」

「あなたが気づいてないだけよ。私のお願い、きいてくれるわよね?」

「聞くしか…ないんでしょ?」


 と御神楽さんがそう言うと、恵果さんは少し困った顔で頷いた。


「さあ、お別れの時間よ。行きなさい」


 少しためらう御神楽さん。


「行きなさい!」


 ためらう御神楽さんに喝を入れる。

 

「恵果…大好きだよ。ずっと…ずっと!」

「私もよ御来。愛してる」


 そのあと御神楽さんは恵果さんの方を振り向かずに走った。

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