記憶ダイブ・ディープ 2

今度は車の中が映される。

本当に遠い場所に移動してるようだ。

御神楽さんの手には端末が。

どうやら御神楽さんのものを買って貰えたようだ。

御神楽さんは嬉しそうに端末の画面を見ている。

雪菜さんと連絡を取り合っているのかな?


「ねえ恵果、『ユグドラシルONLINE』って知ってる?」

「ええ、知ってるわよ。最近リリースされたばっかりのゲームなんでしょ?それがどうかしたの?」


ってことはこの時はまだユグドラシルONLINEが世に出始めたばかりの頃か…。


「羽賀さんにぼくもやってるのかって聞かれたんだ。ぼくは知らないって答えた」

「勧められたらやってみたらいいじゃない?見てるだけでも意外と面白いわよ」

「へぇ…そうなんだ。とりあえずダウンロードだけでもしてみよっ」


と御神楽さんは車内で流れてる音楽に合わせ、鼻歌交じりに端末を操作し始める。

こういう風景を見ていると御神楽さんは本当に自由になったんだと安心する。


「そう言えばこの曲、なんていうの?」


 ダウンロードし終わるのを待っている中、御神楽さんは恵果さんに車内に流れている曲について質問する。


「これはね、『Keep Yourself』っていう曲よ」

「ぼくこれ好き。なんか勇気づけられるっていうか」

「この曲はね、あなたのお母様も好きだった曲よ」

「へえ…、母さんが…?」

「ええ。美月様が初めて外に出られた時に買ったものがこの曲だったわ。歌っているバンドはもう引退しちゃったんだけど…」

「そうなんだ…。ライブっていうのに行ってみたかったな…。母さんがこの曲を買った理由って…?」

「ジャケットがね、気に入ったんですって。」


 と恵果さんは思い出したように笑いながら言う。


「どんなだったの?」

「白い花が映ってた写真よ。えっと鼻の名前は確か…月下美人だったかしら」

「月下美人…」


 と御神楽さんはその花について調べる。

 すると、本当に白い花の写真が出てくる。


「サボテンの仲間なんだね…。花言葉は…『強い意志』」

「この曲にぴったりな花言葉よね。だから美月様はその花のことも大好きだったわ」

「そうなんだ…。ぼくもその花、育ててみたいな」

「いいわよ、引っ越し先についたらお花屋さんに行って買いに行きましょうか」

「ほんと!?ありがと、恵果!」

「いいのよ、私はあなたがしたいことをなるべくかなえてあげたいからね。それに、なにか趣味を持った方がお友達もできやすいでしょ?」

「そうなの?」

「そういうものよ。好きな本とか、漫画とか音楽が一致することで友達はできやすくなると思うわ。たまに…好きなものは全然違うはずなのに仲がいいっていうタイプの友達もできる場合もあるけどね」

「へぇ…。友達作り…奥深い…」


 と御神楽さんは友達作りに興味津々のようだ。












「はい、今日は転校生を紹介します!」


 そんな声が聞こえてくる。

 新しい場所での生活が始まった…という感じかな?

 御神楽さんの通うことになった学校の廊下が映し出された。

 「入ってきなさい」と担任の先生の声が。

 それを聞いて御神楽さんはすぅーっと深呼吸をする。

 そして小さく「よじっ!がんばるぞ…」と言った後、教室のドアを開けて入る。

 御神楽さんが教室に入ると、クラスがざわざわとし始める。

 ぽそりぽそりとだが「かっこいい…」だとか「きれい…」という声が聞こえてくる。


三佐御来さんさみくるです、よろしくおねがいします」


 三佐…?

 雅遼でも御神楽でもない苗字だ…。

 雅遼っていう苗字は使わない理由はなんとなくわかるけど…。

 三佐って誰の苗字だろう…?

 あっ、もしかして恵果さん?

 

「三佐さんは長いこと闘病生活していたので、あまり学校に来れなかったそうです。なので皆さん、一緒に素敵な思い出を作っていこうね」


 という先生にクラスメイトの子たちは「はーい」と返事をする。

 そして御神楽さんは先生に言われた席に座ることに。

 どうやら隣は学級委員長のようだ。

 席に着くと隣の席の女の子が御神楽さんの腕をつんつんとして「よろしくね」という。

 それに御神楽さんは「えっと…、よろしく」と照れながらあいさつをした。

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