記憶の断片
「けいか…ぼく、顔はちゃんと守ったよ。けいかがきれいだって言ってくれたもん」
と幼い御神楽さんがそう言うと、『けいか』と呼ばれる女性は心配そうな顔をしていたが、「そう…」と微笑みかける。
「痛かったでしょ?手当てするわ」
けいかさんがそう言うと、幼い御神楽さんは服を脱ぎ怪我したところを見せた。
その姿はとても痛々しかった。
あるところは打撲をしていた。
あるところは出血をしていた。
治りかけのかさぶたもあった。
けいかさんはその姿を見て一層悲しそうな顔をしていた。
そして小さな声で「守ってあげられなくてごめんね…」と言っていた。
「けいか、けいか…。悲しい顔しないで…。ぼくが弱いから…強くないから悪いんだ」
そういう幼い御神楽さんは今の御神楽さんとは想像もつかないほどだった。
いやでも、そういった鱗片を見せていた。
きっと今も心の弱いところを隠しているんだ。
「あなたは、優しい子ね。ミクル」
そういうと幼い御神楽さんは少しうれしそうな顔をする。
その表情は年相応の幼さが垣間見えて私は安心した。
…うん?今、けいかさん幼い御神楽さんに対して『ミクル』って言わなかった? 『ミクル』…『ミクル』?
あれ?どっかで聞いたことあるぞ…?
「あっ‼‼‼‼‼」
私は声に出してしまう。
そうだ思い出した!あの時の夢だ!
羽賀雪菜さんが出てきたあの夢で、雪菜さん言ってた!
『ミクルちゃんを助けてあげて』って。
ミクルちゃんってもしかして…いや、もしかしなくても御神楽さんのことだ!
でもそうなると、なんで御神楽さんは最初に会った時、自分の名前を『ミクル』じゃなくて『御神楽慧架』って名乗ったんだろう?
記憶喪失になったショックで混濁して自分の名前を『けいか』だと思い込んだから?
御神楽さんは知らないって言ってたけど雪菜さんと御神楽さんとの関係も気になるし…。
となると雪菜さんに一番関わってる穂村さんとの間にも何かあるのかもしれないしだよね?
なんにせよ、今これだけの情報じゃ何が何だかわからない。
しばらく見続けることにしよう。
それでわかる何かがある。
でもここは敵側の、ブルートの縄張りでもある。
中途半端に見せてモヤモヤさせたりもするかもしれない。
そこのところは気を付けなくては!
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