あいつをさがして

「うぉっ、あぶねっ。あっ…そう言えば監視カメラはハッキングしてるっていってたっけな…」


 俺は監視カメラを見て咄嗟に隠れてみたが、ふいにホロウの言ったことを思い出し、本棚から出る。

 なんかこういうの…慣れねえんだよなぁ…。

 性に合わないというかなんというか…。

 それよりも俺は御神楽と合流しなくちゃなんだよな。

 声出して呼ぶと警備員に見つかるかもしれないから、いちいち確認するしかないか…。

 御神楽のことだから本棚に隠れて脅かしてきそうだから気を引き締めて行かないと、と思いながら俺は御神楽を探すことにした。


「ったく、あいつどこ行ったんだよ…」


 夏休みが入る前、昼間にも行ってみたが思ってたよりもこの図書館は広い。

 メッセージを送り、御神楽が今どのへんにいるのか確認することにした。

 そして返信が来る。

 御神楽曰く、『どっかの資料室に隠れてる』そうだ。

 どっかの資料室ってどこだよ!?

 声を出して叫びたくなる気持ちをグッとおさえて俺はそう思った。

 俺は…。


『じゃあそこで待ってろ。俺が迎えに行くから』


 とメッセージを送った。


『ひゅ~。かっこいい~』


 と御神楽が茶化してきたので俺は即答で『うるせえ!』と送った。


『お前マジでそこから動くなよ?前来た時、案内板見たけど3か所あったからな?』


 と送ると御神楽は『はぁい』となんとも気の抜けるような返事を送ってきた。

 こういうところが信用ならないんだよ…。

 まず、最初に行ったのは第三資料室。

 ここが俺のいるところから一番近かった。

 中は埃っぽかった。

 ここはどうやら古典系のものを中心に保管してあるようだ。

 この中にあまり長くいすぎると体を悪くしそうだ。

 ほかの資料室もそんな感じなのだろうか?

 だとしたら御神楽に悪いな、早めに探すがここにはいないようだ。

 続いて第二資料室。

 ここは…本というよりもCDやDVDというようなものが多い。

 ここにも御神楽はいなかった。

 となると、第一資料室か…。

 ここは…なんだ?政治系の古い資料があるっぽいな。

 詳しいことはわかんねえけど。

 ここにも御神楽はいなかった。


『おい、資料室全部探したけどお前いねえじゃんかよ!』

『えー…チラ見したけど、確かに資料室って書いてあったよ?あるものもなんだか資料っぽいし』

『…やっぱ御神楽が俺のとこ来た方がいいのかもな。悪いが、第一資料室まで来てくんねえか?』

『しょうがないなぁ…わかったよ』


 このメッセージのやり取りから約10分経った頃だろうか、扉があく音が喫越える。

 警備員かもしれないから、一応俺は隠れておくことに。


「炎真~?いる~?」


 その声は御神楽だった。

 俺は隠れてた場所から出ることにした。


「お前、どこいたんだよ?」


 といった後俺は御神楽を見て目を見開く。


「御神楽、その恰好どうした?」

「開口一番にそれ?まずは入れてくれてありがとうとかないの?」

「ああ、まあそれはそうだが…。お前、あの後なにがあったんだよ?」

「思った以上に色仕掛けがうまくいきすぎたっぽくてね。んで服脱がされかけた。いやぁ、焦った焦った」


 とのんきに御神楽は言う。

 だが、その体は少し震えていた。


「御神楽お前…。無理してんじゃねえよ」

「無理?無理なんてしてないよ?」


 と御神楽はごまかす。


「嘘つくなよ。お前、震えてんじゃねえか」


 俺が御神楽の震えている手をつかむと御神楽はびくっと一瞬だが震えた。

 そしてその場にへたっと座り込む。

 腰が抜けたんだろう。


「ぼくがこうするしか…ないとおもって…」


 声を震わせながら御神楽はそう言う。


「そんなんだったら俺が強行突破する方が何倍もマシだったじゃねえか!自分でトラウマ増やすんじゃねえよ。…でもまあ、俺たちのためにやってくれてたんだよな…。ありがとう」


 俺は礼を言った後、御神楽の頭に手をポンと置く。

 御神楽はきょとんとした顔をする。

 あっ、さすがに年の近い男にこんなことされても嬉しくないか。

 俺は急いでその手をどける。


「うん…。こっちもごめん…」


 御神楽は目に涙を浮かべていた。

 それをみて俺はかわいそうと思う前に、ああこいつもこんな顔できるんだと我ながらひどいことを考えてしまった。

 御神楽だって人間だ、泣くことだってある。

 第一、こいつは今記憶の一部がない。

 理由はわからないが家出してる。

 こいつだって十分つらい思いをしているんだ。


「お願いなんだけど、叶波と優紗にはこのこと黙っててほしいんだ」

「ああ、当たり前だろ。こんなこと、話せるわけない。だから、まずちゃんとした格好に直しとけ。涙も拭いとけ」


 あいにくハンカチは持ってなかったので俺はポケットティッシュを御神楽に渡した。


「うん、ありがと」


 御神楽は素直にそれを受け取る。


「整え終えたら言えよ。すぐこっちもこっちでサーバーのありかの手がかりを探すぞ」

「うん」

 






「大丈夫、終わったよ。待たせちゃってごめん」


 どうやら御神楽は身だしなみを整え終えたようだ。


「そうか、じゃあいくぞ」

「うん」


 …こんなに大人しくなった御神楽を見るとなんか調子狂うな。

 まあ、怖い目に遭ったんだから仕方がないんだろうけど。


「炎真?そこ突っ立ってちゃぼく進めないんだけど…?」

「ああ、そうか。悪いな」


 俺たちは資料室から出る。

 そのまま無言で俺たちは手がかりを探し始めた。

 …気まずい。

 こういうとき真っ先に話し出したりすると思った御神楽だったが、案外こういう場では真面目なのかもしれない。


「さっきからキミの視線、痛いほど感じてるんだけど…なんかぼくについてる?まだちゃんと身だしなみできてなかった…とか?」


 やばい、見すぎてたのか。


「いや、いいんじゃ…ねえか?」

「あっ、うん。ありがとう」


 おい、なんでそこで照れてるんだ?

 余計なんだか気まずくなるだろ!?

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