不器用な2人
「そういや、思ったんだけどよ…。お前、どっちだ?」
「どっちって、何が?」
ああ、これはさすがに俺の聞き方が悪かった。
だからもう一度やり直すことにした。
「お前の性別、どっちなんだ?男か?それとも女か?どっちかわかんねえからどう接すればいいか…よくわかんねえんだよ」
誰もが気になっていたことであろう、御神楽の性別。
思い切って聞いてみることにした。
誰もそれについて触れてこなかったからな。
顔は…清本がほめてたのもうなずけるほどきれいな顔立ちをしている。
まるでこの世のものとは思えないほどだ。
中性的なのもあってさらに、神秘的な存在に見えてしまう。
「…別に好きに接すれば?」
なんでか御神楽はあからさまに不機嫌そうにそう答えた。
もしかして、こういうことを聞かれるのは地雷だったのかもしれない。
「あっ、悪い。地雷だったか?」
「そういうわけじゃないけど、接し方変わられても『今更?』って感じ。まあ、ぼくもぼくで分かりずらいのもいけないんだろうけどさ。友達として認識してくれればそれでいい。性別なんて関係ない」
と御神楽は俺の顔を見てそう言った。
そんな御神楽の耳元は真っ赤になっていた。
ああ、こいつは平然を装っているつもりなんだろうけど内面はけっこう照れ屋だったりするのかもしれない。
余裕がある、そんな風に見せつけているが俺と似て不器用な性格をしているのか。
「炎真、なにさっきからニヤニヤしてんの?気持ち悪っ…」
「気持ち悪い!?お前、ほんと顔に似合わず毒を吐くよな!?」
「どうも、それは誉め言葉として取っておくよ」
「取っておかなくていいわ…」
と俺が言うと御神楽はまた深刻そうな顔をする。
「どうした?」
「ねえ、炎真は…その…聞かないの?」
「聞く?何をだ…?」
「えっと…その…ぼくがそういう経験あるのかをさ」
「いや、気になったけどさ…。さすがに俺はそういうデリカシーないこと聞くのは気が引けるというか…」
「ぼくの性別は聞いたくせに?」
と図星を指された俺は「うっ…」とうめくことしかできなかった。
「さっきのあれでさ、ぼく、記憶の一部が思い出してきたんだよね。まあほんの一部にしか過ぎないんだけど」
「おお、よかったじゃねえか。…いや、その感じだと嫌な方の記憶を思い出したのか?だったら悪い…」
「謝んなくていいよ。記憶戻ったこと、喜んでくれてありがとね。そんな長い付き合いでもないのに」
「ある意味、付き合いは長いだろ?『ユグドラシルONLINE』で何度か話してたりしてただろ?」
「そうだけど…。なんというかアバター越しじゃなくてさ、こうして会ってからの付き合いは長くないでしょ?会ってなかったらぼくらこうしてお互いのこと話してなかっただろうし」
という御神楽の言葉に俺はああ、なるほどと思った。
こうして現実で会ってないときの御神楽は…『稲荷・雅』はどこか人間味のないやつ、そう思っていたが、実際に会い話してみるとこうも人間らしいやつなんだと感じることができた。
「そんで話はもどるんだけど、ぼく、自分の父さんにこういうことされてたんだよね」
と御神楽は顔色を変えずにさらっと言った。
「はあ!?自分の親にか!?…マジか」
「うん、大マジ。なんでそういう経緯になったのかまではまだ思い出せないんだけど」
「いや、それ以上はあんまり思い出さない方がいいんじゃねえか?余計しんどくなるだろ?」
「そりゃそうだろうね。しんどかったから現にぼく、記憶を失くして『ぼく』っていう人格をぼくの脳が保とうとしたわけだしさ。しんどいけど、ぼくはどうしても思い出したい記憶があるんだ。だから、つらくても頑張るしかないよね」
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