奇跡に等しい
「皿木はたぶん、まだ羽賀雪菜のことを諦めてはいない。だから、蘇らそうとしているの」
ホロウさんの言うことに私たちは耳を疑った。
「ちょっと待って?羽賀雪菜はもう、この世にはいないということでいいのかな?」
と御神楽さんは穂村さんに聞く。
それを聞いた穂村さんは暗い顔をする。
「ああ…。俺は、雪菜が事故に遭ったのを目の当たりにした」
「そう…。つらいことを思い出させてゴメン」
「…大丈夫だ。うん、大丈夫」
穂村さんの大丈夫というその言葉はまるで穂村さん自身に言い聞かせているように私は見えた。
「蘇らせるというのは可能なのですか?いくら現在の医療技術が発展しているといっても…死者をよみがえらせるなんてとても無理なのでは…?」
と優紗はホロウさんにそう訪ねる。
「そうね、今の技術じゃあとてもできないことよ。あなたたち、こんな都市伝説を知っているかしら?『ユグドラシルONLINEには使用した人間の精神データを保管している』ってやつ」
それを聞いて私はピンときた。
「あっ、それ…。私、その掲示板見たことあるかもしれません。たしか…死んでしまった人の精神データも半永久的に保管してるっていうのですよね?」
「あら、清本叶波。あなたが知っているなんて意外だったわ。こういうの苦手だと思ってた」
とホロウさんは私の言ったことに少し驚いていた
「それを口に出したってことはその都市伝説は都市伝説じゃないってこと?」
と御神楽さん。
「そう。まあ、蘇らせるっていうのはちょっとオーバーな言い方だったかもしれないわね。所詮データだから、本人がよみがえったとは言わないの。そして皿木はそれを実行させようとしている」
とホロウさんがいうのを聞いて穂村さんはこういった。
「待ってくれ、俺はあいつが…雪菜が事故に遭って…体がめちゃくちゃになっているのを見た。それでもよみがえらせることが可能ってことなのか?」
顔を青ざめながら穂村さんはホロウさんに尋ねた。
そして続いてこうも言う。
「黒景が自害する前、こう言ってたんだ。『あの方の器になりゆる存在はもう我らの手の中だ』って」
「…ごめんなさい。憶測だから、そこまで可能なのかはわからないわ。つぎはぎの体のまま蘇生させるのか…。それとも、精神の波長の合う誰かを生贄にして羽賀雪菜を作るのか…はたまた雪菜そっくりのアンドロイドを用意してるのか。でも…」
とホロウさんが言いかけた後、穂村さんはこういった。
「雪菜は誰かを犠牲にしてまで蘇るのなんて望んでない…だろ?」
「ええ、そうよ。あの子はそう言う子だわ」
「…やっぱお前、神木刹那なんじゃねえのか?」
「あら?なんのことかしら」
穂村さんの問いかけにホロウさんはオホホホホと笑ってごまかした。
ホロウさんってこんな風におちゃらけたりする人だったんだ。
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