箱
私たちは穂村さんたちのいるのところへ。
黒景の姿はそこにはなかった。
その場はなんだか、どんよりと重い空気に包まれていた。
その発信元は、穂村さんだった。
理由を聞くため、私は優紗のもとへ。
「穂村さんに何があったの?」
「…細かいことはわたくしにもわからないですわ。しかし、黒景と決着はつきました。敵の自害という展開となりましたが…」
優紗はやりきれないという顔をする。
「自害…?じゃああの爆発はそれだったんだね」
御神楽さんはふむふむとそう言う。
「んで?炎真はなんでそんなどんよりしてんの?」
御神楽さんがそう言うと穂村さんはハッとわれに返る。
「お前には関係ねえよ。それより、そっちの方はちゃんと目的達成したのかよ?」
どうやら何が起きたのか、穂村さんは話す気はないようだ。
「ちゃんとやったよ。ほら、これが報酬さ」
と言って、御神楽さんは穂村さんに先程手に入れた小さな箱を放り投げて渡す。
「「ちょっと御神楽さん!?」」
私と優紗はあわてる。
せっかく苦労して手に入れた情報を軽々と放り投げられたんだもん。
驚くに決まっている。
穂村さんも「おいバカ!何やってんだよ!?」と落とさないようしっかりキャッチした。
御神楽さんは思い出したかのように「あっ、やべっ」とちいさくつぶやいていた。
「御神楽さん!こういうものは慎重に且つ丁寧に扱ってくださいまし!」
御神楽さんは優紗のお説教を食らった。
あまりの迫力に御神楽さんも…。
「ごめん、さすがにうっかりしすぎちゃった」
と反省はしているようだ。
しばらくたった後、優紗は。
「あら?そういえば御神楽さん、装備が解除されていますが…?」
御神楽さんが立ち眩みを起こした時解除された、そう言おうと思ったが、御神楽さんが先に「もう必要ないかなって。自分で解除したよ」と優紗に言ったのだ。
私は困惑する。
が、御神楽さんはそれに気づいたようで、私の耳元でこういった。
「あんまり、心配させたくないからさ。内緒にしといて?」
と。
そのあと、御神楽さんはそそくさと穂村さんの方へ行く。
私と優紗も続けてそちらに向かうことにした。
「どう?なんかわかった?」
御神楽さんは穂村さんにそう聞く。
「はあ?お前がさきにゲットしたんだからなんか知ってんじゃねえのかよ?」
「いや、ぼくが触っても何ともなかったよ。やっぱり羽賀雪菜とこの中で何かしら関係のあるキミならわかるんじゃないかなぁって。何か目星をつけられるとこあった?」
御神楽さんのその問いに穂村さんはうーんと考え込む。
そして箱の外側になにか書いてないかとか…そういうのを探す。
「あっ、ここになんかあるな。パスワードを入力してください…?」
「パスワード、ねぇ…」
「無難に羽賀雪菜さんの誕生日…とかってご存知ですか、穂村さん?」
優紗は穂村さんに聞いてみる。
穂村さんは知っていると答える。
そして穂村さんは羽賀雪菜さんの誕生日である『0324』を入力。
だが、何の反応もない。
「反応ないね。もしかして、嘘を教えられてたんじゃないの?」
御神楽さんは穂村さんにそう言う。
「間違いねえよ!あいつ、自分の誕生日についてよく愚痴ってたからよ…。誕生日が春休みと被るって」
「ふーん…。まあそんなのどうでもいいけど」
御神楽さんは急に興味を失くす。
「そんな言い方ねえだろ」
「はいはい、ぼくが悪かったよ」
なんてやり取りを二人はしてる。
「うーん…?あれ、なんで寝てたんだろう?あぇっ!?なんで僕縛られてんの!?」
柳くんは意識を取り戻した。
…そりゃ驚くよね、起きたらいきなり縛られてるんだから。
「ああ、竜太起きたんだね。よかった。今それ外すよ」
御神楽さんは柳くんのところへ駆け寄る。
そして、拘束を解いた。
「えっ…と?どちら様で?」
柳くんは御神楽さんにそう言う。
そうか、御神楽さんに会ったときは『稲荷・雅』の姿になっている時だもんね。
…あれ?なんか柳くんの顔が赤い気が…?
「どうしたの竜太、顔赤いよ?」
「へっ!?あっそうですか?すみません!」
「いや別に謝らなくてもいいよ。…あっ、そういえばこの姿で会うのは初めてだね。ぼくは御神楽慧架。『稲荷・雅』の中の人だよ。できればぼくに会ったこと内緒にしてくれると嬉しいな」
と御神楽さんはそう柳くんに微笑みかける。
すると、柳くんの顔はますます赤くなった。
そして、「あっ…はぃ…」とうなずいた。
あっ…、これは…あれなのでは?
一目惚れとかいうあれなのでは?
確かに御神楽さん、顔立ちやスタイルが中性的で美人さんだし一目惚れされてもおかしくない。
本当に性別はどっちなのだろうか?
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