戦闘・絡新婦

「優紗、ぼくが吹っ飛ばされてた間に相手についてわかったことってある?」


 御神楽さんは優紗に敵についてわかっていることを聞き出す。


「『絡新婦』…名前に蜘蛛というのが付いているあたり、糸を飛ばす攻撃をしますわ」


 と優紗が。

 でも、私はそれに疑問を持った糸だけで、あんな爆発音が起きるのかということだ。


「糸を飛ばすだけであんなに爆発音ってするものなの?」

「…それはどうかわたくしにはわかりませんが。属性が関係するのかもしれませんわ」

「属性が?」


 私は自分の頭の上に『?』のマークが浮かび上がるのを感じる。

 優紗のそれをきいて御神楽さんは「あー、そういうことね」という。

 私は余計に訳が分からなくなった。


「たぶん、『黒景』の属性は炎派生の属性…『爆発』なんだと思う」

「派生属性…?」

「基本的な属性は炎、水、風、大地の四つに分けられてるんだけど、これにさらに細かい分類がされている属性だよ。例えば、水の派生は氷みたいにね。レベルを上げれば、自分に近い属性の技も使えるようになるんだ」

「でもよ、あの糸の属性ってなんだ?見たことねえぞ?」


 穂村さんは御神楽さんにそう言う。


「もしかして『大地』の属性の派生とかかもね。派生属性は細かく分類されすぎてて正直ぼくでもわかんないし。ってかこういうのって優紗の方がわかるんじゃない?キミんところがカミキエンタープライズと協力して『ユグドラシルONLINE』作ったんだしさ」

「製作に関わっていたのはわたくしのお父さまですし…。わたくしの知っていることはほとんど御神楽さんが話してくださいましたわ。わたくしの出る幕はございません」


 と優紗は少し不貞腐れた。

 

「あっ、ごめん。すねないでよ」

「すねていませんわ」

「おい、あんまり悠長に話してる時間はなさそうだぞ?」


 と穂村さんは私たちにそう言った。


「おっとそのようだね」

「えっ!わわっ!?どうしよう!」


 私はどうすればいいのかわからなくなってその場に立ちすくしてしまう。


「叶波はどうやらあんまり戦い慣れてないようだね。ぼくがフォローするよ」


 と御神楽さんは私を抱えながら敵の攻撃を躱した。


「それでいいかな?」

「えっ、あっ、はい。よろしくお願いします」


 ユグドラシルONLINEのランキングマッチ、現最強の『稲荷・雅』がフォローしてくれるんだったらこれほど頼もしいことはない。


「ってことでぼくは叶波のフォローに入る。まあ、キミらそこそこ強いんだからぼく抜きでもあんなのに勝てるよね?」


 と御神楽さんは不敵な笑みを浮かべる。

 それがどうやら優紗、穂村さん、そして黒景を挑発したようだ。

 敵を挑発するのはまだしも…味方まで挑発しちゃって大丈夫なの!?


「御神楽さん…?『そこそこ』ですって?それは一体どういう意味ですの?」

「てめぇ、あとで覚えてろ?」

「…小虫の分際で言ってくれるではないか‼‼‼」


 黒景は御神楽さんと私に向かって札のようなものを投げる。

 どうやらあれが爆発の正体のようだ。

 糸でそれをコントロールしているようだ。


「おい、どこ見てんだよ!」


 と穂村さんは私たちに向かってきた札を自らの炎で燃やし、無効化した。


「ひゅ~!やるぅ~」


 御神楽さんはそういって穂村さんをあおる。


「うるせえ!煽るな!こうなったらてめえの出番なんて与えねえんだからな!」

「そうなってくれるとありがたいね。こっちも楽しみが増えるってもんだ」

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