敵、現る。

「それにしてもお前、仮にも最強の『稲荷・雅』だろ?なに吹っ飛ばされてんだよ」


 と穂村さん。

 それに対して、御神楽さんは…。


「ぼくだって、油断することくらいあるさ。だってまさかこんなことになるなんて思ってもみなかったしさ」

「お二人とも、お話をしていないで目の前の敵に集中してくださいますか?」


 と優紗…もとい『エルフ・ロゼッタ』様が私たちのところに駆け寄る。

 私は思わず、「わあ、ロゼッタ様…」と声が漏れてしまった。


「叶波…。今わたくしたちは対等な存在ですのよ?」

「あっ、そうだったゴメン」

「まあまあ、優紗。ピリピリしないで?仕方ないって、あこがれの存在が居たら誰だってそうなるよ?それにこういう時は冷静さを失った方が負けなんだ」


 と御神楽さん。


「おや?また小虫どもが増えたかえ?」


 と、聞き慣れぬ声がした。

 遠くに誰かいる。

 あれが、御神楽さんの言っていた番人みたいな邪魔者だろうか?


「誰が小虫だ?あぁ?!」


 と穂村さんは声の主にメンチを切った。


「もう、言ってるそばから挑発に乗ったらダメだって」


 と御神楽さんは穂村さんの頭に軽めのチョップをくらわす。


「何すんだよ!?」

「さっきも言ってるでしょ?挑発に乗ってすぐカッとなるのがキミの悪い癖だよ?よく単細胞って言われんじゃない?」


 そう御神楽さんは穂村さんに言う。

 何も言い返せない様子からどうやら図星のようだ。


「おやおや、挑発には乗らなんだか。つまらんのぅ…」


 目の前にいたのは下半身が蜘蛛のような姿をした着物を着た女性のアバターだった。


「もうここから帰ることはないであろうから、わっちの名前をお教えしよう。わっちの名は『絡新婦・黒景』」


 とその女性は言う。


「ねえ、炎真。羽賀雪菜ってこんなやばいやつらと関わり持ってたわけ?」


 と御神楽さんは穂村さんに聞く。


「いや、こんな奴ら知らねえよ俺は。たぶん…あいつも…」

「あの言い方ですと殺す気満々と言ったところでしょうね…」


 優紗のその言葉に私は「えっ!?」と声に出して驚く。


「あっ、いえ怖がらせるつもりはありませんのよ?もうしわけありません、叶波」

「ううん、大丈夫。私が勝手にビビって驚いただけだし」

「お前ら仲良しこよししてるのはいいが、そろそろ本格的に向こうも攻撃にかかるぞ?気ぃ引き締めろよ?」


 という穂村さんの声に私と優紗はうなずく。


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