無防備

 穂村さんと優紗が絡新婦と戦っている後ろで、御神楽さんはいきなりこんなことを言い始めた。


「ここでぼくの『妖怪講座』を始めようと思う」

「へ?」


 突然のことで私は戸惑いを口に出して言った。


「なんで今こんな時に?」

「いや、まず敵を知るのが戦いの基本だし?」


 この人、結構自由奔放なのかもしれない。

 

「で、まあ今回は目の前にいる『絡新婦』についてね?見た通りわかるとおもうけど、あれは蜘蛛の妖怪。伝承としては日本各地にあるんだけど…大体は糸で人間を操ったり、動けなくして殺したり食べたりする。そんな妖怪さ」


 と御神楽さんは私にわかりやすいように説明してくれた。


「創作作品とかなんかじゃ和風アラクネとか言われてるね。まあ、見た目蜘蛛だし同一視されやすいのかも」


 と御神楽さんがそう言うと背後から、黒景の攻撃が飛んでくる。


「み、御神楽さん!?後ろ!」


 私は後ろから攻撃が来ているのを御神楽さんに伝える。


「あ、うん。それはとっくに気づいてるよ」


 御神楽さんは素手で黒景の攻撃を打ち消した。

 その強さに私は呆気にとられた。


「優紗~、炎真~?何やってんの?攻撃、ここまで来てるよ~?」


 とまた御神楽さんは2人を煽る。

 凄い剣幕で優紗と穂村さんはこっち…っていうか御神楽さんを睨む。

 それに私は思わずビビってしまった。


「お~怖い怖い。あんま煽りすぎたらダメだね、ぼくが攻撃をくらいそうだ」


 と言った後、ぼそっと「まあ、かわせるんだけど…」っと言ったのを私は聞き逃さなかった。

 凄い強気なんだな、この人…。

 最初に遭った時のイメージとはガラッと変わった人かもしれない。


「さあ、今のうちに目的のところへ向かうとしよう。幸い、戦闘に夢中で『羽賀雪菜』のなにかしらのデータがあるところが無防備だしさ。ぼくらの目的はあいつと戦いに来たわけじゃないでしょ?」


 という御神楽さん。

 そうだ、それもそうだ。

 私たちの目的は『羽賀雪菜』さんについてのデータがここにあるってホロウさんが言ってたからそれを調べに来たんだ。

 なので私は御神楽さんについていく。

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