新しい友

 私たちは理科室の前を通る。

 うっ…理科室かぁ…。

 学校の理科室って怪談話とかあって怖いイメージがあるんだよなぁ…。

 私の小学校の理科室には昆虫の標本とか腹を開かれたネズミのホルマリン漬けが飾ってあってそれが妙にトラウマとなっている。

 クラスの男子が理科室の骨格標本は本物の骨を使ってるんだ~!とかいって騒いだりしてたし…。

 そのせいもあるのか私は理数系が苦手なのだ。


「清本さん?顔色が少し悪いようですが…?」


 桜宮さんは私にそう話しかける。

 トラウマを思い出してどうやら私の顔色が悪いように見えたらしい。


「本当?叶波、大丈夫?」


 御神楽さんも私のことを心配してくれた。


「私、小学生の頃、理科室で嫌な思い出があって…。それ思い出しちゃったのかもしれません…」


 それを聞いて御神楽さんは『ああ、なるほど』という顔をする。


「標本とかが気持ち悪いってことか。ぼくは全然平気だったけど、クラスメイトで行くのを嫌がる子がいたっけな」


 御神楽さんは懐かしい~とつぶやく。


「入るの嫌なら、ぼくひとりで理科室に入るよ。優紗は叶波と一緒にいてあげて」

「わかりましたわ」

「すみません、御神楽さん…」


 そういって御神楽さんは理科室の方へ入っていく。


「清本さん、本当に大丈夫ですか?無理、していませんか?」

「体の方は全然元気なので!心配かけちゃってすみません…」

「そうですか、お元気なのですね!よかったですわ」


 このあと、私たちはどうすればいいのか分からず、沈黙が続く。

 せ、せっかくだし、私から話しかけてみるべきなのでは?

 で、でも目の前にいるのは憧れのロゼッタ様ご本人だ。

 何を話せばいいのか私はわからなくなって一人アワアワしてしまう。



「どうされました?」

「あっ、いや…。そういえば目の前に憧れのロゼッタ様がいるんだ~って思うとどうすればいいのか分からなくなって…」


 私がそう言うと桜宮さんはふふっと笑う。


「清本さん、今目の前にいるのはわたくし、桜宮・E・優紗であって『エルフ・ロゼッタ』ではありません。折角こうして巡り合えたわけですし、わたくしたちは同い年です。なので、お友達として接してくださいな」

「友…達…」


 私はそうつぶやく。

 桜宮さんはというと急に顔を真っ赤にした。


「あっ!すみません…わたくしがお友達ですと、迷惑ですか?」

「そ、そんなことないです!むしろうれしいです!桜宮さん!」


 友達が増えて迷惑だなんて考えたことは一度もない。

 むしろたくさんいる方が人生、楽しいに決まってる!


「でしたらお互い、ファーストネームで呼び合いましょう!できましたらわたくしにタメ口なるものもお使いになってください」

「た、タメ口!?」

「はい!わたくし、あこがれですの!」

「桜宮さん…じゃないや、優紗さん、そんなのに憧れて…?」

「こう、なんていいますか…素敵ではないですか!それと、ファーストネームにさん付けなしでいきましょう」


 意外と桜宮さん…じゃなくて優紗は積極的な性格のようだ。

 …でも不思議と仲良くなれそう、いや仲良くなれるそう思えた。


「そうだね、それじゃあ改めてよろしく、優紗!」

「はい!よろしくお願いします、叶波!」


優紗と友情を結んだのもつかの間、理科室の中からものすごい音が聞こえた。


「うわっ!?」

「ものすごい音がしましたわ…!わたくし、少し中の様子を見てきます!」


 優紗は理科室の中へ入っていく。

 が、そのあと優紗の悲鳴が。


「きゃあ!」

「優紗!?どうしたの!?」


 私は覚悟を決めて、苦手だった理科室の中へ入る。

 友達が危険な目に遭ってるんだもん!

 入ることに躊躇なんてしてられない!


「…ひっ!?」


 私は目の前の光景に思わず小さな悲鳴が出た。

 理科室にあるテレビのモニター画面から、無数の触手のような…コードのようなものがあふれ出ているからだ。


「優紗、御神楽さんは!?」


 恐る恐る周りを見てみるが御神楽さんが見当たらない。


「わかりません…。もしかするとに捕らわれたのかもしれません!」


 これがホロウさんの言っていた古いサーバーへの入り口なのだろうか?

 御神楽さんはそのトラップにかかって画面の中に入っていったの?


「もしかしたらこれがホロウさんの言っていたサーバーへの入り口なのかなって私は思うんだけど…」


 私は優紗に聞いてみる。


「確かに…あれは襲ってきたりしませんわね…」


 優紗は恐る恐るコードのようなものに近づく。

 すると近づくとコードも伸びてきた。

 こちらの様子をうかがっているのだろうか?

 まるで意識があるみたいだ。


「不気味…ですが、乱暴をしない限りは襲ってきたりはないようですわ」

「…ってことは御神楽さんは攻撃をしたから無理矢理連れていかれたっていうことかな?」

「サーバー内へ向かうにはこれの力が必要かもしれません。行くしかありませんわ…」


 私もコクンと頷く。

 ゆっくりと刺激しないように私たちはテレビ画面へ近づく。

 するとなにか強い力で私たちは吸い込まれていった。


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