余韻
なんやかんやで次の日。
月曜日だ。
昨日の出来事が衝撃的過ぎて私は教室についたということにも気づかない程だ。
一緒に登校していたちーなに誘導されてなんとか言葉を発する。
「ふぁー」
私はあまりのことでそれしか言えなくなっていた。
「あんたさっきから言葉になってない言葉しかいってないじゃん」
とちーなが私に言った。
「いやでも、叶波の気持ちわからなくはないよ」
とはっちゃんが私のフォローに入る。
「だってあんな近くにユグドラシルONLINEで最強って謳われてる『稲荷・雅』がいたんだよ?」
「ふぁー…」
はっちゃんの言ったことに私はまた言葉になってない言葉を出す。
「おーい、叶波~。生きてる~?」
周りのクラスメイトも私を心配してか声をかける。
「ふぁーふぁー」
やっぱこれしか発せなかった。
「こりゃ重症だわ、大丈夫じゃない」
「何があったの?」
「いやね、昨日叶波に誘われて、私とはづきでユグドラシルONLINEのクエストやってたんだ。そしたらさ…」
と言葉を発せない私の代わりにちーながクラスメイトに昨日の出来事を話してくれていた。
するとクラス中がざわつく。
「えっ!?マジで!?」
「いいな~!!」
クラス中が『稲荷・雅』の話で盛り上がる。
やっぱりあの人、本当にすごい人なんだなって思った。
むしろ下手をすれば芸能人よりも人気あるかもしれない。
そんなことを思いながら余韻に浸っていると、教室のドアがガラガラっと開く。
担任の岸野先生が来たのだ。
今日は月曜日だから一時間目は英語。
だから岸野先生がホームルームの後そのままいるという感じになる。
「はーい、出席取るぞ~」
岸野先生はかったるそうに出席を取る。
そしてしばらくすると私の番が。
「清本。うん?清本!」
「ふぁー」
「…ホウホウ。清本おまえ、余程今日の小テストに自信があると見た」
先生のその言葉に私の余韻は吹っ飛んで行ってしまった。
「ふぁっ!?何それ!?そんなの聞いてない!…です」
「だって言ってないからな。抜き打ちだし」
岸野先生のその言葉に、私を含め生徒全員がブーイングし始める。
「おうおう、文句があるんなら日頃から勉強しろ~。はっはっはー」
これが先生と言う人のとる態度なのだろうか。
ホームルームから一時間目までは10分くらい時間がある。
詰め込めるだけ、教科書の内容を詰め込もう。
ああ、こんなことなら日頃から勉強しておけばよかった。
そして、小テストの結果はというとなんとか10問中6問正解できた。
ギリギリセーフだ。
岸野先生の小テスト10問中5問、つまりは半分以上正解だと補修のプリントをしなくて済む。
焦ったけど、合格できてよかった…やればできるのね、私。
ちょっと自分に自信がついた。
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