ラッキー…?

 帰り道。

 今日はなんか色々あって部活は休み。

 詳しいことはよくわからないけど、とにかく休みなのだそうだ。

 はっちゃんは美術部。

 ちーなは用事があるようでちょうどよかったと、先に帰った。

 そう言えば私、ユグドラシルONLINEを始めてそんなに経ってないはずなのにすごく幸運だな…。

 最初はロゼッタ様だ。

 はっちゃんがお茶会に当選したから、会えたし、お話しすることができた。

 ロゼッタ様はメディアに出たり、定期的にそういうファンサービスをしてくれるのでそこも彼女の人気だったりもする。

 『焔竜』はランキングマッチトップ3の中でも唯一プレイヤー本人が顔を出したことで有名だ。

 確か『焔竜』としてだけではなく、『紅離武存弩羅魂クリムゾンドラゴン』とかいうチームのリーダーとかなんとか…。

 いわゆるヤンキーと言うやつだ。

 っていうか今時こんな感じのヤンキーがいるんだな…。

 でも『焔竜』本人は基本暴力沙汰は好きじゃないようで、ボランティア活動とかやってる方が好きだってテレビで言ってた。

 気が付いたら喧嘩を売られることが多いのだそうだ…。

 なんというか、不憫…。

 そして、なんといっても『稲荷・雅』だ。

 あの人はロゼッタ様や『焔竜』のようにメディアに出ることがない。

 ファンイベントの情報も聞いたことないし、本当に神出鬼没な存在。

 そういうこともあり、あの人の出るユグドラシルONLINEの大会は視聴率が高い。

 その人物に私たちは初めてのクエストをしてた時に出会い、そして話すこともできてしまったのだ。

 こんなことできったのって一体どれだけすごいことなのだろうか。

 思い出しただけで興奮が抑えきれない。

 

「うっ!」


 いけない、考え事しすぎて人にぶつかってしまった。

 謝らないと!


「ごめんなさっ…あっ!」


 私はぶつかってしまった人物を見て、言葉を失ってしまった。


「あぁ?なんだ?」


 その人物は『焔竜』だったのだ。

 ちょうど考えてたのに会うってこんな幸運ある?!

 いい人っていう噂きくけど、やっぱヤンキーってこともあってちょっと怖いかも。

 なんでこんな時に限ってちーなもはっちゃんもいないのかなぁ…!?

 い、いやでも、そっくりさんかもしれない。

 イチかバチか聞いてみるか…。


「おい、なにぼーっとしてんだよ?」

「ひぇっ!はっ!?すみません!…あの、もし間違えてたらごめんなさい。もしかして『焔竜』さんでしょうか?」


 勇気を出して聞いてみる。

 すると彼の反応はちょっと驚いたようだった。

 そしてコクンとうなずく。


「あったこと内緒にしてくれ。いろいろ騒がれると親に迷惑かけちまう」

「へっ?…あぁ、はいわかりました。そういえば、言い残してました!さっきぶつかったの、ごめんなさい!」


 言い逃した謝罪をしっかり私はした。


「気にしてねえよ。あっ、そうだ。俺今ここに行きてぇんだけどよ、どう行けばいいかわかるか?」


 と『焔竜』は端末の画面を私に見せる。

 この場所は…ゲームセンター。

 わりと近くの場所だ。


「はい、わかりますよ。あそこにある曲がり角を曲がったら信号機があります。そこを渡って左に曲がって…ずっと歩いていけば着くと思います」


 たぶん、これで合ってるはずだ。

 でもちょっとここら辺の不良ってよばれる人たちが多くたまってるからちょっと怖いんだよな…。


「そうか、わかった。ありがとな。お礼って言えねえかもだけど、これやるよ」


 と『焔竜』はポケットから何かを取り出し、それを私に渡してくれた。

 あ、あめちゃんだ。

 しかもリンゴ味…。

 

「あ、あの…余計なことかもしれないですけど、気を付けてくださいね。あそこらへん色々危ないので」

「大丈夫だ。じゃあな、助かった」


 そう言って『焔竜』はその場を去っていった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る