お茶会

 今日ははっちゃんが当選したバーチャルお茶会の日。

 はっちゃんたち美術部は昨日ヒイヒイ言いながらようやくコンクールに出す絵が完成したようだ。

 文面からもなんだか疲れているオーラがだだ漏れていた。

 とりあえず、一緒にコミュニティサーバーに入ろうということで私は『みんなのひろば』というサーバで待っていることにした。

 どうやら私が一番早く来てしまったようだ。

 特にすることもないので、ぼーっと周りを見てみることにする。

 …いやぁ、それにしてもこの感じ、本当にリアルだなぁ。

 仮想空間っていうのが信じられない。

 本当にどこかの町で待ち合わせしているような感覚になる。

 時代って文化って進化するんだなぁってしみじみ思ったりする。

 こういうところ、おばあちゃんみたいってよく友達に言われたりするんだけどね。

 そうこう思っているうちに最初にはっちゃんが、次にちーなが待ち合わせ場所に来る。


「叶波、はやいね~。私も早く来たつもりなのに」

「ごめん、待たせちゃったわ!」

 

 と二人とも私に言った。


「ううん、大丈夫だよ。仮想空間を眺めてたから暇じゃなかったし」

「そう?ならよかった!じゃあさっそく、サーバーの方に行こうか!」


 とはっちゃん。

 私とちーなはうんとうなずき、パスコードを入力。

 そして、ロゼッタ様のお茶会サーバーへ入る。

 

「うわぁ…!」

「すごい」

「うん、すごい」


 私たち三人は目の前の光景にすごいとしか言えなかった。

 目の前の光景はと言うと、それはもうすごい洋風庭園だった。

 小さい頃におとぎ話に出てきそうな、そんな豪華な庭園だった。

 ロゼッタと言う名にふさわしいほどの、さまざまな色の薔薇が咲き誇っていた。

 薔薇の花たちを邪魔しない程度に、上品な白いテーブルと椅子が今回のイベントに来る人数分置いてある。

 私たちのほかに、もう何人も会場に来ている人がいた。

 なんだろう、すごく上品な雰囲気の人たちが多い。

 わ、私、場違いじゃないかな…?

 チラッとちーなとはっちゃんの様子を見る。

 案の定、二人は私以上にガクブルしていた。


「ひ、ひえ~」

「場違い感が半端ない~」


 だ、大丈夫かな…。


「あら?そこの方たち?震えてどうしたのですか?」


 だれかが私たちに話しかけてきた。

 ああ、言葉遣いがすごく上品だ。

 あれ?ちーなとはっちゃん、すごい顔してるけどどうしたんだろう?


「ロロロロ!?!?」

「ロゼッタ様!?」


 二人ともものすごい勢いでひれ伏す。

 私もロゼッタ様と聞いて驚く。


「えっ!?ロゼッタ様!?あっ、騒いじゃった。ごめんなさい」

「うふふ、楽しい方たちですわね。今日のバーチャルお茶会、緊張せずに楽しんでくださいな。では」


 ロゼッタ様はそう言って私たちのもとを離れて行った。

 うわぁ、本物のエルフ・ロゼッタ様とお話ししちゃったよ…。

 しかもオーラがものすごい上品。

 ファンがいるっていう理由もわかる気がする。

 緊張せずって言われてもこりゃ無理だわ…。


 このあとお茶会でやったことは、ロゼッタ様を中心に前回のランキングマッチについての反省とか、これからの頑張り。

 そのあとには『愛をささげる会』っぽいモノをやった。

 そして、今回のお茶会に来た特典としてアバターの装備、「ピンクローズのブローチ」をもらった。

 これは可愛い!

 私の初期装備だったアバターも少し華やかになったかも。

 あとで調べてみたが、ピンクのバラの花言葉は感謝だそうだ。

 ファン想いなところもまたロゼッタ様の魅力なのかもしれない。

 ちーなとはっちゃんのおかげで私もすっかりエルフ・ロゼッタ様の虜になったかもしれない。

 そんなことを感じられた一日だった。

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