おさそい
そして私たちの教室につく。
「叶波!奈々子!おはよう!」
と、高校からできた新しい友達の田中はづき(私は彼女をはっちゃんと呼んでいる)が挨拶を。
「おっは~、はづき」
「おはよっ、はっちゃん」
と私とちーなははっちゃんに挨拶を返す。
「ねねね!連休中にもチャットで話したけどさ!ランキングマッチ!」
とちーなはまた先程の話をし始める。
はっちゃんはそれに食いつく。
「ほんとにね!もう、悔しい!あともうちょっとで『焔竜』に勝てたのに!!」
そう、はっちゃんもちーなと同じくユグドラシルONLINE…特に『エルフ・ロゼッタ』様の熱烈なファン、通称『エルオタ』である。
「それにしても、本当に二人ともロゼッタ様が好きだね」
「かなは、あんたもだいぶ私らに染まられてきてると思うけど?」
ちーなはニヤニヤと私に言ってくる。
それにつられはっちゃんも…。
「そうそう!叶波もロゼッタ様のこと様付けしてるじゃん」
「まあ…言い方を変えればこれは洗脳に近い気が…」
「やったね、洗脳成功してるよ、はづき!」
「ね。このまま沼にハマって行こう」
二人ともズズズッと私に迫ってくる。
「まあもしも、実際に会えたらすごい嬉しいかも…。ロゼッタ様、女子力の塊!っていうイメージあるし」
「それな」
「わかる」
と二人は私の言ったことに強く賛同する。
しかも即答だった。
…愛がすごいのね。
「じゃあさ、こんどこれ一緒に行こうよ」
と言ってはっちゃんが見せてきたのは端末機器の画面。
画面には『エルフ・ロゼッタ』と気ままにバーチャルお茶会と書いてあった。
いわゆる、ファンクラブのイベントだ。
人気のプレイヤーにもなるとファンクラブの設立だって出来ちゃう。
プレイヤー本人に会えるわけではないけれど、ユグドラシルONLINEの個人のコミュニティサーバーでお話しすることができる。
好きな人、あこがれの人と近づけることができるのだ。
私も好きな芸能人がこれをやっているのを知って始める気になったのというのはある。
ちーなにはそれを隠してるけど。
「えっ!これって!?」
「そう、バーチャルお茶会!」
この画面を見てちーなはやはり開いた口が塞がらないと言った感じだ。
ほんとに彼女のこと好きなんだなぁ。
「倍率めちゃくちゃ高いやつじゃん!よく当てたわね!?」
「うん。もうこれ、一生分の幸運使い果たしたんじゃないかな…。急に不安になってきた」
とはっちゃんはガクブルする。
「これね、私含めてあと2人行けるの。だから、一緒に行かない?」
「私、はづきのこと一生尊敬するわ。行く、行きたい!行かせてください!」
ちーなは即答する。
「えっ?私も行っていいの?」
「いいに決まってるじゃん、友達なんだし!それにかなはをロゼッタ様好きに染め上げたい」
はっちゃんはふふふふ…と不敵な笑みを浮かべながら言った。
「そのバーチャルお茶会っていつやるの?」
私ははっちゃんにいつやるのか聞く。
「えっとね、来週の土曜日。で、このID入れないとコミュニティサーバーに入れないからそこは忘れないでね。後で送っておくから」
「わかった」
「ありがたきハピネス…」
そうして、ゴールデンウィーク明けの学校生活が始まった。
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