第63話
言うまでもないけどあの子犬はリルだ。
話があると言ってモンスターの姿に戻ったリルはなぜか子犬になっていた。
「おそらくリルが飲まされた薬の副作用でしょう。それにしてもまずかったです。二度と飲みたくありません」
リルは思い出したように顔をしかめた。
「そっか……ってあれ?」
僕は首を傾げた。モンスターの状態が子犬になるほど戻ったのなら人もそうであるべきだ。
ならリルは大人の姿をしていたんだろうか? 聞いた話だと子供の姿だったって。
するとカインが憐れんだような目でリルを見ていた。
「お前……、最初会った時あれで大人の姿だったのか?」
「どういう意味ですか? どこからどう見てもあれは大人でしょう」
それを聞いてカインは眉をぴくぴくと動かしてひきつった笑いを浮かべる。
よく分からないけど今のリルが着ている服が微妙に大きめなのはこれでも縮んだからなんだろうか。
それにしても背は低いし、体は小さいのに胸だけ大きくてアンバランスだ。
だからこそ僕はあまりリルを見ないようにしていた。
ただでさえロリ巨乳好きの悪評が流れてるんだし、これ以上なにかあったら大変だ。
ロリ巨乳に拍車がかかったリルを見てカインが言った。
「おい糞雑魚。お前この雑魚を飼え」
なんだか雑魚が渋滞していて分かりづらいけど意味が分かってしまうのは幼馴染みだからだろうか。
「……ごめん。多分無理。リル。リルの主食ってなに?」
「お肉です」
やっぱり……。
「……じゃあ無理です。これ以上肉食獣が増えたらうちは破産しちゃうよ。女神の首輪をつけたのは僕だから責任は取りたいんだけど……」
憲兵の給料だけじゃフレアとしずくを養うので精一杯だ。
ただでさ僕は憲兵に戻れるか分からないのに。
それを聞いてカインが舌打ちした。
「糞雑魚が。金くらいあとで稼げばいいんだよ。そんなんだからお前はいつまで経っても村人なんだ」
「うう……」
僕が落ち込んでいるとウィスプが庇ってくれた。
「た、たしかにアルフ様は甲斐性があるわけじゃないですけど、これでも必死なんです! 私のパートナーを悪く言わないでください」
「ウィスプとかいうガチ雑魚に用はねえ」
「ガチ雑魚……。うう……」
ウィスプは僕と一緒に落ち込んだ。
カインは面倒そうに息を吐き、リルを見下ろした。
「仕方ねえな。おい雑魚犬。散歩はしねえぞ」
リルはまたもやむっとした。
「いりません。リルをなんだと思ってるんですか?」
「非常食だ」
こうしてリルはカインが飼うことになった。
心配だけど、カインなら大丈夫な気もした。
口は割るけど、なんだかかんだでカインは優しいのはみんな知ってるから。
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