第24話
食事が終わったあと、僕は昼間かいた汗を流す為にお風呂に入った。
「いてて……」
僕はカインに殴られた頬を抑えた。
すごかった。フレアの方が何倍も痛いけど、あの状態でも立ち上がるカインの精神力がすごい。
対して僕ときたら……。
「まだまだ甘いなー」
「失礼します」
僕が独り言を言ってると後ろからウィスプの声が聞こえた。
振り返るとタオルを一枚纏っただけのウィスプがお風呂に足を入れるところだ。
僕は思わず吹き出した。
「ぶはっ! ちょっ、ちょっとどうしたのウィスプ?」
「治療の続きをしようと思って。アルフ様はゆったりしていてください」
「ゆったりって……」
しずく程とは言わないけどウィスプのスタイルもいい。谷間もはっきり見えるし、腕や足も健康的だ。
そんな姿見せられたらのぼせちゃうよ……。
それでも好意を無下に扱うことはできないじ僕はドキドキしながらウィスプに背中を向け、傷を癒やしてもらった。
自分の体をよく見るとここ最近の訓練で刻まれた傷だらけだ。
今日のテストで頑張ったせいか筋肉も張っている。
緊張して黙っていると、ウィスプが口を開いた。
「ごめんなさい。私、その、実は試験に受かって欲しくなかったんです……」
「え? な、なんで?」
僕はびっくりした。
てっきりウィスプは憲兵になることを応援してくれてると思ったからだ。
ウィスプは申し訳なさそうに告げる。
「……だって、なんだかアルフ様が遠くに行ってしまうみたいで……。私、きっと安心してたんです。弱い自分と同じ悩みを共有してくれるアルフ様に。でも最近のアルフ様は随分強くなられて……。それに比べて私は弱いままだから……。その……、もう私は必要とされないんじゃないかと心配だったんです。だってアルフ様にはあんなに強いフレアちゃんとしずくさんがいるから……。だから――――」
「そんなことないよ! 僕にはウィスプが必要なんだ!」
僕は振り返り、ウィスプの肩に手を触れた。
そんなことを考えていたなんて思いもしなかった。
ウィスプの目には涙が浮んでいる。
「でも……」
「僕がどうして憲兵になりたかったか。昔からの夢もあるけどそれだけじゃない。いつも優しくて頑張ってくれてるウィスプに相応しいパートナーになりたかったからだよ。一生狭い畑を耕すだけの村人がパートナーじゃウィスプまで馬鹿にされる。僕はそれが嫌だったんだ」
「アルフ様……」
ウィスプは涙を流しながらも嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔があまりに可愛くて、愛おしい。
僕は今まで秘めていたことを言う覚悟を持った。
「だ、だって僕はウィスプのことをこの世界の誰よりも愛――――」
「あー。二人でなにしてるのー? あたしもウィスプを触りたいのに~」
せっかく良い雰囲気だったのにフレアとしずくがお風呂に入って来た。
僕らを見つけたフレアは裸のまま「やあ!」と飛び込んでくる。
「ちょっ! 今良いとこだったのにってわぶっ!」
フレアのお尻は顔に当たり、そのまま下敷きになった。
小さくて弾力のあるお尻に後頭部がゴンと床に叩き付けられる。
朦朧とする意識の中で僕はぶくぶくとお風呂に沈んだ。
「アルフ様! 大丈夫ですか?」
心配するウィスプにフレアが抱き付く。
「ウィスプー。今日もむにゅむにゅ触らせてね♪ なんだか癖になっちゃった」
「きゃあっ! だからそっちはアルフ様以外はダメって言って、ひゃぅんっ!」
フレアがウィスプの柔らかい体を隅々まで揉んでいる。
息ができない……。このままじゃ僕はお尻に殺される。
死因の欄に『尻』と書かれる。
もがく僕を尻目にフレアはウィスプをまさぐり遊んでいる。
しずくは僕らを気にせずゆったりとお湯に浸かっていた。
「今日も平和ね。ちょっとうるさいけど。人の体でお風呂に入るのは悪くないわ。胸も浮くから楽だし」
フレアとしずくはタオルも付けずに浸かっている。
ウィスプは顔を真っ赤にして悶えていた。
僕はお尻の下で気を失いかけている。
これが僕の新しい日常らしい。
かくして僕は憲兵になった。
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