体力はありますか? いいえ、ありません
第15話
僕は地獄にいた。
全身から汗が溢れる。筋肉が固くなって動くたびに痛かった。
ここは女神の森から少し離れた所にある草原。
なだらかな平地に短い草が生え、そよ風が気持ち良い場所だ。僕はそこで訓練をしていた。
「ほら。しっかり走る。でないと死んじゃうよ?」
フレアはそう言いながら僕に炎の弾を放ってくる。
「うわあああああああああぁぁぁぁぁっっ!」
僕は叫びながらそれを走って避ける。紙一重で避けた場所から巨大な火柱が上がった。
「あれだけのことを言ったんだから覚悟はあったんでしょう?」
しずくは魔力で作った巨大な剣を何本も宙に浮かし、それを僕に投げつけた。
「死ぬううううううううぅぅぅぅぅぅっっ!」
僕はどんなに無様と言われようが体をくねらせて魔力の剣を回避した。地面に刺さった魔力の剣が爆発を起こし、地面が吹き飛ぶ。
開いた口が塞がらない。これが人の体に当たったら一体どうなっちゃうかなんて想像したくもなかった。
「もっと! もっと手加減してよ! 死んじゃうよ!?」
「してるよー」
「してるわよ」
二人の声が重なった。
これで手加減してるの? じゃあ本気を出したらどうなるわけ?
今だって服の背中部分は燃えてなくなってるんだよ? お尻だって丸見えなのに。次はなにが見えちゃうの?
「アルフ様ー。頑張ってくださーい。おやつはドーナツですよー」
ウィスプはバスケットを持って呑気に手を振っている。
「ドーナツ? じゃあ、あと五分で休みね。飛ばしてくから気合い入れてよ?」
フレアは目を輝かせてそう告げた。手の平に見える炎の弾が更に大きくなる。
まるで小さな太陽だ。
ああ……、どうやら僕の寿命はあと五分らしい。
「それじゃあラストスパート、スタート!」
フレアは笑顔で火の玉を投げつける。それはどんどん大きくなっていく。
そう。僕は今、地獄にいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます