第14話
革で作られた憲兵の服を着る壮年の男。確か憲兵団を任されている憲兵団長の一人だ。
顎髭を生やしたその男は僕らを見て驚いていた。
「コカトリスの群れが町を襲ってると聞いて来たんだが、これは……」
町の広場には大量の鳥が丸焼きとして並べられている。フレアとしずくがそれを大きな風呂敷に包んでいるところだ。
それを見て団長は唖然としていた。
「君達がやったのか?」
団長の後ろから続々と憲兵達がやって来る。彼らは皆、その光景に驚いていた。
「えっと……」
僕はなんて言ったらいいのか悩んでいた。
実際僕はなにもやってない。やったのは全部――
するとフレアが前に出てきて胸を張る。
「あたし達にかかればこれくらい楽勝だよ」
「あたし……達?」
団長は怪訝な顔で僕達を見回した。
フレアは体が小さいし、しずくは傍から見れば淑女にしか見えない。ウィスプも人の姿になれば優しげな町娘だ。
そして僕は、どこからどう見ても村人でしかない。団長が不思議に思うのも無理なかった。
だけど周りには誰も証言してくれる人は居ない。町人は皆避難するか隠れるかしている。
団長が頭の後ろを掻くと、後ろにいたカインが僕を指差して叫んだ。
「嘘だ! 嘘に決まってますよ。大方どこかの援軍が倒してくれたのを自分達の手柄にしようとしてるんです。こいつは最弱のアルフですよ? コカトリス一体だって倒せるわけがない。だってそうじゃなきゃ今まではなんだったんだって話になる」
悲しいけどカインの言ってることはほとんど事実だった。
「最弱?」
団長は首を傾げる。そして僕を見て訪ねた。
「そうなのか?」
どうやら僕が試験に落ちたことを覚えてないらしい。
答えかねていると僕の周りにフレアがやって来た。
人懐っこい笑顔を浮かべて僕の背中を押す。
「ほら。言ってあげて。アルフがなんなのか、自分がどうなりたいのか。例え他人に笑われてもアルフがそれを笑わない限り大丈夫だよ」
「フレア…………」
そこへウィスプもやって来て、優しく微笑み告げる。
「私は……、どんなことがあってもアルフ様について行きます」
「ウィスプ……。うん。ありがとう」
僕はウィスプにお礼を言ってから団長に向き直した。
そしてずっと自分が思い描いていた夢を、諦めていた未来を現実にする覚悟を持って叫んだ。
「ぼ、僕は……、最強の魔物使いになる男、アルフ・フォードですっ!」
隠し続けていた自分の気持ちを外に出すのは気持ちがよかった。
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