第12話

 僕達はとぼとぼとした足取りで家路に着いていた。

 夕日がどんどん沈んで丘を赤く染め上げていく。

 今日も晩ご飯抜きだ。明日は僕とウィスプだけでも働いてなんとかお金を稼がないと。

 この際フレアとしずくは家に置いていこう。帰ってきて家がある保障はないけど。

 レネップから少し離れた時だった。

 ほとんど同時にフレアとしずくが足を止めた。

 少し歩いてからそれに気付いた僕は不思議に思って振り返った。

「……どうしたの? なんか耳が動いてるけど」

 空腹のせいでぼうっとする僕はピクピク動く二人の耳をなんだか可愛いなと思いながら見ていた。ウィスプも不思議そうに二人を眺める。

「おトイレですか? それならあっちの茂みで――――」

「来るよ」

「来るわね」

 フレアとしずくは真剣な顔でそう呟く。風が辺りに生える草を揺らした。

 僕とウィスプは顔を見合わせて疑問符を浮かべた。

 するとウィスプはなにか納得したように手を叩いた。

「……あ、大丈夫ですよ。私、紙持ってますから」

「違うって。ウィスプは聞こえないの?」

 フレアは町の方を見つめて言った。

「え? なにがですか?」

 ウィスプも町の方を向くけど僕同様にフレアの言ってる意味は分かってない。

「まったく。これだからウィスプは」

 呆れるフレアにウィスプはむっとした。

「そ、そういう言い方って。モンスター差別ですよ? そりゃあ私は最弱のウィスプですけど――――」

 ウィスプがそう自虐した時だった。

 町の方から悲鳴が聞こえた。それも一つや二つじゃない。

 それを聞いた僕は体をびくっと震わせる。

「え? なに? なにが起きたの? お祭り?」

「ある意味そうかもね」

 フレアは真面目な顔で口角だけ少し上げた。

「祭りは祭りでも血祭りだけれど」

 しずくもひんやりと言い放つ。

 するとフレアのお尻付近で金色の尻尾が動き、しずくの背中では銀色の翼が広げられる。

 それを見てさすがの僕も異常事態が起きていることを理解した。少なくともお祭りじゃない。

 目を凝らして見てみると、さっきまでいたレネップの町になにかたくさんの影が見える。

 それは不規則に飛んでいたり、跳ねていたりしている。

 そしてそれに追われるように逃げ惑う人々の声。

 その光景を見てさっきから起きていた胸騒ぎが一気に大きくなる。

「……あれって……、まさか…………」

 モンスター?

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