第11話

 僕には夢があった。

 公国軍の憲兵になってこの村から出て行くんだ。そして最強の将軍になって帰ってくる。

 そしたら僕を馬鹿にしていた奴らも見返せるはずだ。

 でもその夢は脆くも潰えた。

 格技のテストでは戦うのが怖くて逃げ出し、生まれもっての素質が重視される魔術の試験では石ころ一つ動かせなかった。

 魔物使いとして生きようにも弱い僕に従うモンスターなんてほとんどいない。

 僕はスタートラインにすら立てずに最弱の烙印を押され、みんなの笑いものになった。

 それから他人から逃げるように僕は村の隅で畑を耕して過ごしていた。

 隣には優しいウィスプがいる。僕と同じ最弱のモンスターだ。

 僕らは互いの気持ちがよく分かるし、それで幸せだった。

 もうなにかを目指すのは諦めよう。

 僕にはこのレネップすら広すぎる。

 あの小さな村がお似合いなんだ。

 そう自分に言い聞かせ、もう二年が経っていた。

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