第8話

 歩いて一時間ほどの所にある町、レネップ。

 丘と丘の間にあるので峠を越えなければ見えない町だ。

 僕が住むマズーロ村よりも遙かに大きく、住居や店舗がたくさんあった。

 僕にとってはここが一番の都会だ。

「うわ。ど田舎じゃん。ここで働くの?」

「ここの人間達はどうしてこんな寂れた町に住んでるのかしら? 罰かなにか?」

 レネップを見たフレアとしずくは失礼な感想を並び立てた。

 そんな二人にウィスプが注意する。

「いけません。今から働く場所なんですよ? 多少薄汚くても我慢して黙ってて下さい」

 週に一度来るのが楽しみな隣町は女性陣から散々な評価を受けていた。

「で、でも、ここは食べ物も大体揃うし、服や冒険用の装備だって買える店もある。酒場とか遊ぶ所も一応。あ、それに憲兵の訓練所だってできたんだよ。そんな田舎ってこともないんじゃないかなー」

 我ながら精一杯の反抗だった。だが通りに並ぶ商店を見てフレアとしずくは告げる。

「でも売ってる食べ物の種類少ないよ。値段だって定価に近いし」

「服も流行のものは皆無ね。古くさいものばかりだわ。装備だって初期装備だし。あんなの身に付けても無駄よ。精々スライムを倒せるくらいだわ」

 なぜか人間界に詳しい二人の率直で辛辣な評価は町の人達にも聞こえているらしく、ギロリと鋭い目線が僕らに注がれた。

「ふ、二人共もっと静かにしてよ。町の人に聞こえてるって」

「だって本当なんだもん」

「わたし達がその気になればこんな町、一分後には地図から消せるわね」

「かもしれないけど……。ちょっとウィスプ。二人になんとか言ってあげてよ」

 僕は焦りながら後ろを振り返るとウィスプはいじけて座り込んでいた。

「スライムさんを倒せるということはウィスプも……。はあ……。どうせ私は初期装備でやられる経験値稼ぎのウィスプですよー……」

 落ち込んでるし。

「だ、大丈夫だって。ほら、ウィスプはスライムより使える魔法が多いし、宙にも浮けるでしょ。絶対にウィスプの方がスライムより強いよ」

 僕は必死にウィスプを励ました。この子はたまに自信をなくしていじけてしまう。

「そ、そうですか? 本当にそう思いますか? ウィスプは最弱じゃないって」

 ウィスプの顔が曇りから晴れになり、僕は安心してうんうんと頷いた。

 なのに、

「でもぶっちゃけスライムとウィスプって大差ないよねー」

「スライムが物理攻撃ばかりの雑魚でウィスプが魔法攻撃ばかりの雑魚ってだけだものね」

「二人共! もっと言葉を選んでよ! せめて雑魚はやめてあげて! ほら! ウィスプが落ち込んで地面に魔方陣描き始めてるから!」

 その魔方陣も攻撃魔法で最も弱い『ショック』だった。威力は人に殴られた程度だ。

 冒険者からはこんな威力で魔力を使うくらいなら殴った方がマシと言う評価を受けている。

 ウィスプが使える魔法はほとんどが強化魔法や回復魔法。そして逃げる為の魔法だ。

 それだってまだあまり高レベルのものは使えない。訓練すれば使えるようになるらしいけど。

 ウィスプの描いた魔方陣からは魔法が打ち上げられ、儚くも消えた。

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