お金はありますか? いいえ、ありません。

第7話

「今、うちにはお金がありません。なぜですか?」

 小屋の床の上。

 葉っぱで作った最低限の露出だけを抑えた服を着るウィスプの前で同じ格好をしたフレアとしずく、そして僕は正座をしていた。

 なんで僕まで……。

「二人を止められなかった責任はアルフ様にもあります」

 心を読まれた僕は返す言葉がなく、沈黙した。

 フレアが手をあげる。

「はい。アルフの稼ぎがしょぼいからです」

 僕の心に言葉のナイフがグサリと刺さった。

「それもありますが、主人に対して言う言葉ではありません」

 二本目のナイフが刺さると同時にしずくが手を上げる。

「はい。この人が家畜を飼ってないからです」

「家畜を飼うには知識とお金が必要なんです。残念ながらアルフ様には両方ありません」

 ナイフだらけの僕の心が悲鳴を上げている。

 この家に僕の味方はいないの?

 ウィスプはしっかり者だけど以外と天然だから時折こうやって僕の心を無垢の笑顔で抉ってくる。本人には言わないけどこういうのが一番きつかったりするんだ。

 ウィスプは高らかに宣言した。

「私達はこの家の主であるアルフ様に仕える身です。そのアルフ様が貧困で喘いでいる今、することは一つしかありません。アルバイトです! 出稼ぎです! ご奉公です!」

「ええー」

 フレアとしずくの声が重なる。二人は僕を非難する目で見た。

 まるでお前の甲斐性がないからだと言ってるようでまたまた心に刺さる。

 それでも僕は退かなかった。無い袖は振れないからだ。

「僕だって本当はやらせたくないよ。だけどこれは二人のせいで起こったことなんだ。だから命令するね。皆でバイトして当面の生活費を稼ごう」

 僕の『命令』は首輪をしているこの三人には絶対だ。

「わかりました。アルフ様」

 ウィスプは嬉しそうに頷き、フレアとしずくはガックリとうな垂れるように右に続いた。

 僕は苦笑いを浮かべた。

「まあまあ、僕もやるからさ。明日町に行って働き口があるか聞いてみよう」

「……はーい」

「……仕方ないわね」

 最強の魔物であるフレアとしずくにとっては人にこき使われることを強要するなんて聞きたくない命令だろう。

 それでもそんな私情を聞いてられないほどうちは困窮していた。

 今日だって一食だけだし、それも森で採った薬草のスープと近くの川で釣れたアオアユが一尾だけだ。

 お皿に置かれた魚を四等分して食べるなんてわびしいにも程がある。

 畑の野菜ができるのにはしばらく時間が掛かりそうだし、当面は働いて稼ぐしかない。

 かくして最強モンスターを引き連れた村人のアルバイトが始まった。

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