第2話 とくと聞け! 姦嬲姦女学院ガイダンス

私は川原木魅血流かわらぎみちる、姦嬲姦女学院高等学校の生徒だ。この高校では生徒の事を姦徒と呼ぶのに不必要にもこだわっているみたいですが、私はまだ慣れそうにないので、自分は生徒であるという意識を続けることにしました。

衝撃の入学式を終え、天井から降ってきた大量の先輩方の学ランからどうにか自分らに合うものを見つけて、教室に向かいます。

あんなぶっ飛んだ入学式を終えて、次に初授業ということですが、何が起こるかは具体的には想像できないものの、またろくでもない事が起こることは確かでした。


不安を胸に、教室へ向かっていきます。


ガララッ


教室の扉を開くと、女の先生が居ました。よかった、今度は裸じゃない。


「お前たち、早く各自席に着け」


身長185cmはある長身で巨大な黒い肩パットを付けている先生はドスの聴いた声でこちらを睨みながら、そう言いました。よく見ると左手にショットガンを持っているし、この学校では日本の法律は機能していないということが分かり、ますます不安が深まっていくばかり。


「これより初授業を始める。私の名前は婆邪芳子ばじゃよしこ、お前たち1-蛇組の担任であり、担当教科は"技術暴力"これから一年間よろしく頼む、以上。それではお前たちにもそれぞれ自己紹介をしてもらう。」


技術暴力という教科がこの高校にはあるそうです。いちいちこの学校で聞こえる聴きなれない言葉に反応していてはキリがないということをようやく理解した私は、違和感を無視して左耳から通りぬけさせることをすることにしました。


「ではまずはそこのモジャモジャ頭、出席番号一番、川原木魅血流。お前から自己紹介をしろ。」


私が出席番号一番だったことを知らなかったので戸惑いつつも、席を立った。


「出席番号一番、川原木魅血流です。趣味は読書です。これから一年間よろしくお願いします。」


無難な自己紹介をすると、ありきたりな拍手が起こり、次の出席番号二番の者から最後の出席番号まで順番に自己紹介をしていき、無事何も無く終わった。どの生徒も戸惑っているような雰囲気が見られる。先輩方の学ランを漁って居た時に漏れていた不満の声などを聴くに、本当に誰もこの高校の内情を知らずに入学してきたみたいだ。それなら当然そうなる。自分のこの高校生活への不安が他の生徒にもあるものだと思うと、少しは落ち着けるかもしれない。


「これで全員の自己紹介が終わったようだから、これからこの学校についてお前たち新入生が知るべき情報を伝える。聞き逃さぬようにしっかりと集中して聞くように。」


「まずはこの学校における基本教科について先に教えておこう。君たちはこの姦嬲姦女学院のシステムについて何一つ情報を持ち合わせていないだろうから、これから伝える情報は聞き逃すな。


この姦嬲姦女学院の基本カリキュラムは3つの大教科から成り立っている。まず一つは暴力。お前たちはまだ姦になれていない、このまま生きていけば男共に搾取されて捨てられていくだけの弱弱しすぎる女だ。だが力、つまり暴力を手に入れることによって、そのような一方的な支配に抵抗し、屈服させることが可能になる。暴力の教科では主に戦闘技術について学んでもらうことになる。相手が素手であることを前提とした基礎格闘暴力から、銃撃戦を想定した技術暴力、戦う為に必要になる基礎体力をつけるための暴力準備の三つに分かれる。


二つ目、三つ目の教科は他の弱者向けの教科と大して変わらない。言語と数学だ。言語では現代文と英語、数学では他の高校とそう変わらない数学の授業がある。


後はそれぞれ特殊教科として、選択制の教科が数教科あるが、これらはこれから配るプリントを各自確認して、明日までに選択してプリントを提出するように。」


「なにか質問は」


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「はい、質問があります。」


「何だ、言って見ろ、出席番号14番 広瀬王てし子」


「退学してもいいですか。」


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「許されることではない。なぜならお前たちはこの姦嬲姦女学院に入学した時点で全ての人権を剥奪され、お前たちにはすでに日本国籍すら無い。お前たちはこの高校の所有物という扱いになっている。」


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「そこの川原木魅血流を除きお前たちは全員男どもによる暴力・性暴力の被害を受けた者たちだ。お前たちはその加害者がどういう男共か知っているか?マン・ゲーゲンのメンバー、またはメンバーの親族だ。マン・ゲーゲンは被害者を永遠に消し去る。自分らに都合の悪い女共にピースカ騒ぎ立てられると困るからだ。消し去られる前に私たち姦嬲姦高校がお前たちの身元を回収することで、お前たちはいまだにこうして息を吸って生きていられる。」



正直私はこの先生の言っていることを半分程度も理解しきれていないが、ただ分かったことも多い。ここから逃げることはできなさそうだということと、私はこの高校において相当のイレギュラーの生徒であるということ。


分かったことに絶望しながら座りつくしていると、後ろの席から怒号が聞こえてきた。


「言ってる意味がわからない!マン・ゲーゲンだかなんだとかわけの分からない陰謀論を理由に私たちを誘拐して監禁するって宣言したってことでしょう!こんなキチガイしかいないような高校にいられるか!!!!!!」


ガタン!


椅子と机を蹴り倒してその生徒はソソクサと教室の扉に向かって怒りに身を震わせながら歩き出した。


「死ねこのキチガイ教師!」


そう捨てせりふを吐いて扉を開けて教室から出て行こうとした彼女だったが、、、、、


そうはいかなかった


「出席番号21番 大道場罪子 さっきも言った通り、お前たちはすでにこの学校の所有物であり、授業中の許可の無い退出や退学等の一切も許可することはない。」


そう先生が言うと、扉から大きな音が鳴り出した。


ビシビシビシビシビシビシ!!!!!


「ウギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


大道場罪子が掴んでいた教室を開ける扉から電流が流れた、痛々しい断末魔が教室をこだまし、恐怖が生徒の顔をドッと曇らせた。ここからは逃れられない、この高校からは逃れられない、そうこうまでして教え込まれると、足掻く気持ちなどは生まれてこなくなる。


「他に何か質問は。」


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「部活動はありますか?」





何を言い出すんだと思ったが、そうだ、彼女はもう既にこの状況から逃れられないことをしっかりと認識して、この高校で3年間をできるだけ有益な形で楽しむことを見据えている、適応能力がずいぶんと高いみたいだ。この姿勢、見習うべきか。


「部活動はある。雄殺術部おすさつじゅつぶと武器開発部、破壊技術部、真剣道部の四つだ。」




なるほど、この高校では部活動に勤しむ事で楽しむという選択肢は、なさそうだ、、、。


「時間だ、質問は打ち切る。他に聞きたいことは寮で先輩にでも聞け。これにて授業は終了、解散しろ。今日はもう寮に行って明日から始まる学校生活に身構えていろ。」


あ、、、出られないって言っていたしなんとなくわかってたけど、やっぱり寮なんだ、、、、。





チャイムが鳴った。




黒焦げになりながらも辛うじて生きていた大道場罪子を無視してすたすたと教室を出て行くほかの生徒たちの薄情さに疑問を持ちながらも、無理も無いとも思えてくる。

が、私は声をかけることにした。無視して出て行くにはあまりにも痛々しい過ぎる。


「あの、大丈夫?大丈夫には見えないけど、、」


「ありがとう。当然大丈夫じゃないから、できれば保健室まで連れて行ってくれるとうれしい。この高校にあるのかどうかはわからないけど、、、」


焦げた彼女を肩に担いで、どこにあるのか分からない保健室へと足を運んだ。




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