5 横浜編

 


「えー、5回目を迎えました、【お笑い!!quiz王】。これまでに、正解者が一人もいませんでしたので、キャリーオーバーして幾星霜いくせいそう。なんと、50万円に膨れ上がっちゃってます。何がって? ああ、もちろん、賞金に決まってまっしゅ。さて、行き当たりばったりのクイズ番組ですから、何が起こるか、アイドンノウです。

 わたくし、司会進行を務めさせて頂きます、渡辺ヒロミと申します。よろしくお願いします」


 パチパチ……(見物人の拍手)


「今回も、どんな珍解答が出るか、ベリー楽しみですねっ!本日は横浜にやって来ました。チャレンジャーは外人さんです。ハロー!」


「コニチワ」


「おう、日本語、大丈夫ですか?」


「ダイジョブ。ニホンノダイガクイッテル」


「オッケー。お名前は?」


「トム・サンクス、モウシマス」


「では、トムへの


 第1問です。『源氏物語げんじものがたり』の作者は?」






「ア、コレ、シッテマス。ムラサキシキフ」


「ブー! あ~、惜しい。5万円取り損ねましたね。正解は紫式部むらさきしきぶ。濁点ありね。ふ~、セーフ。


 第2問。武田信玄たけだしんげんと言えば、何カザン?」






「……カツカザン?」


「ブー! 活火山かつかざんのこと?」


「イエス」


「残念! 風林火山ふうりんかざんのフウリン」


「オー! フーリン(風鈴)ネ。チリンチリンネ。シッテルヨ」


「ま、いっか。


 第3問。織田信長おだのぶなが明智光秀あけちみつひでと言えば、何の変?」






「カンコーヘン?」


「ブー! 残念。本能寺ほんのうじへんのホンノウジ。肝硬変かんこうへんなんて、難しい言葉知ってますね?」


「トモダチ、ソレデ、ニューインチュー(入院中)」


「えっ? 20代で?」


「ノー、ノー。ソノヒト、ヨンジュー(40)スギノダイガクセー(大学生)」


「なるほど。では、


 第4問です。表面の態度はきわめて礼儀正しく丁寧だが、実は尊大で相手を見下げているさまの四字熟語。何ブレイ?」






「ジョセー(女性)ノトシ、キク、ブレー(無礼)ネ」


「ブー! 残念。慇懃無礼いんぎんぶれいのインギン。さすが、アメリカの男性は、レディーファーストですね」


「ノーノー、イングリッシュ」


「オー、アイムソーリー。私、総理。ひげソーリー」


 ハハハ……(見物人の笑い声)


「では、


 第5問です。身近な事情は、かえって分かりにくいことを、トウダイ何?」






「ノーノー、トーダイ(東大)、チガウネ。ヨコハマノダイガクイッテルネ」


「ブー! 残念。灯台とうだいもとくらしのモトクラシでした。ミスタートム、専攻は?」


「オー、センコー(先生)、チンチクリンノハゲチャビンネ」


 アハハ……(見物人の笑い声)


「専攻と先生のセンコーと勘違いしたようです。えー、途中経過です。まだ正解がありませんが、1問目の紫式部は実に惜しかったですね」


「イエス。シーツ、ムラサキイロ。デモ、イチマイダケ。ニマイアッタラ、ムラサキシキブ、イッテタネ」


「ははーん、なるほど。通訳すると、こう言うことですね。シーツ、つまり、紫色の敷布を持ってるが、一枚しかないのでムラサキシキフと答えたが、もし、二枚持ってたら、複数になって、ムラサキシキブと答えたであろう。と言うことですね?」


「イエス」


「うむ……。一枚しか持ってなくて助かったと、ほくそ笑んでる関係者がいるかも、カモン。なんちゃって。では、


 第6問です。機会を狙って、様子をうかがうさまの四字熟語、何タンタン?」






「タンタン? ……オー、アレネ?シッテルヨ。タンタン、タヌキノ○○タマワ、カゼモナイノ二、ブ~ラブラ~♪」


 アッハッハッハ……(見物人の爆笑)


「ブー! ブー! ブー! やだ、もう。放送禁止用語ですよっ! あー、ビックリした。生放送じゃなくてよかった。誰に聞いたの? それ」


「ヨンジュースギノダイガクセー」


「肝硬変で入院中の友達ですね? ったく、ろくなこと教えないんだから。ずっと入院してろ。正解は虎視眈々こしたんたんのコシでした。では、


 第7問です。相撲すもうなどの最後の日をセンシュウ何?」






「オー、センシュー(先週)ワ、ツボハチイッテ、カラオケイッタネ」


「ブー! 残念。千秋楽せんしゅうらくのラク。ほう、楽しそうですね。居酒屋のツボ8に行ってからカラオケに行ったんだ? 誰と行ったの?」


「ゴジュー(50)スギト」


「その人も大学生?」


「ノーノー、コイビト」


「げっ。恋人? 50代の女性と付き合ってんの?」


「ソー。デモ、カワイー(かわいい)カラ、サンジューダイ(30代)二ミエルネ」


「愛してるの?」


「オー、アイラブユーエムイー(Ume)」


「ユメさんて言うの?」


「ノー、ウメ。アイラブUme」


 テレビカメラに手を振るトム。


 ボーーーッ!


「タイミングよく、偶然に鳴った船の汽笛きてきも祝福してますよ。メイビー、ネイビー、アーミー。なんちゃって」


 ハハハ……(見物人の笑い声)


「では、ツボ8ゆかりの


 第8問です。ニシンが大漁にとれたことで有名は北海道の地名は?」






「ニシン? アー、ニシンゲポノコト?」


「ブー! 残念。石狩いしかり。ニシンゲポって、日進月歩にっしんげっぽのこと?」


「ソーソー、ソレソレ」


「難しい言葉知ってますね。これも40過ぎの大学生から聞いたの?」


「ソー。イガク(医学)ワ、ニシンゲポイッテタ」


「肝硬変で得た知識ですかね? では、


 第9問です。コーヒーを漢字にしたとき、共通する部首ぶしゅは?」






「ブシュ? アー、ブスネ。カオブスデモダイジョーブ(大丈夫)。タノシー(楽しい)ヒトスキネ」


 ハハハ……(見物人の笑い声)


「ブー! 残念。王でした。さて、最終問題です。ミスタートム、最後に5万円稼いで、ウメさんとのデート代にしてくださいね」


「オー、サンキュー。ガンバルデス」


「では、


 第10問です。背筋が寒くなるとは、どんな感じ?」






「カンジ(漢字)ニガテ(苦手)ネ。シッテルカンジ、アイ(愛)ダケネ」


「ブー! 残念。恐怖感などでゾッとする感じ。でも、漢字は愛だけ知っていれば大丈夫。ミスタートム、ありがとうございました。これ、参加賞です」


「アリガト」


 参加賞のポケットティッシュを受け取るトム。


 パチパチ……(見物人の拍手)


「バイバイ。イケメンの上に、足が長いですね」


「サヨナラ」


 ポケットティッシュをズボンのポケットに押し込みながら、海辺に向かうトム。テレビカメラがその様子を追っている。しばらく、紺碧こんぺきの海を堪能すると、歩き出すトム。途端とたん、つまずいて転びそうになる。


 ハハハ……(見物人の笑い声)


「……トホホ。長身が災いして、足元の段差に気づかなかったみたいです。足が長いのもよしあしですね。あしからず、なんちゃって」






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